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ハーレム宇宙戦艦
官能リレー小説 - SF

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ハーレム宇宙戦艦 8

クリスは「フッ」と不敵な笑みを浮かべて言った。
「こういう場合は逃げるが勝ち・・・撤退よ!!」
「了解しました・・・至急この宙域を離脱します」
航海長のアレクサンドラは戦艦リリウムの撤退を全速力で実行した。
「火星艦、本艦に向かって発砲を開始しました!」
「お任せください・・・」
アレクサンドラは巧みな舵さばきで敵の砲撃をかわしていった。

(これから一体どうなるんだろう・・・?)
軍に入って間も無いのに、いきなり戦争になるかもしれない状況にカナメは不安になる。
クリスはそんなカナメの尻を撫でながら耳元に唇を近付けて色っぽく囁いた。
「大丈夫よ〜、カナメちゃん。あなたはこのクリスお姉様が守ってあげますからね〜♪」
「あぁん・・・艦長ぉ・・・」
…と、その時!

 ズズ〜〜ンッ!!!!

敵の砲撃の一発がリリウムに命中し、艦全体が激しく揺れた。
「右舷艦尾部に被弾!!」
「被害は!?」
「人的被害はありません!しかし艦体にかなりのダメージが…!」
「艦は壊れたら直せば良いわ。人が死なないのが何より。…それにしてもサーシャ(アレクサンドラの愛称)ちゃんが操艦をミスるなんて珍しいわねぇ…?」
「…申し訳ありません、艦長…一瞬だけ気が散りました…」
「そ…そう…気は抜かないでね…?」
「はい…」
「……」
アレクサンドラ(長いので以後サーシャ)の隣に座っていたアイーシャは、ふと違和感を感じ、サーシャにしか聞こえない小声で彼女に尋ねた。
「…なぁ、お前今わざと弾にぶつかりに行かなかった…?」
「は…?」

この二人は同期でリリウムの勤務になる前からの付き合いだ。
ずっと隣でサーシャの操艦を見てきたアイーシャは今の被弾に“非常に”違和感を感じた。
サーシャがこの程度の光線弾など易々かわせる腕の持ち主である事も良く知っていた。

「ねえ、絶対わざとだよね?今の…」
サーシャは涼しい顔で答える。
「…なぜ私がそんな事をしなければならないのですか?全く理解に苦しみます。妙な言い掛かりは止めてください…アイーシャ・ディヤナ少佐」
「あ、しらばっくれちゃってぇ…何か隠してやがるなコイツ」
そんな事もあったがリリウムは無事に逃げおおせた。


同じ頃、月では地球と火星それぞれの代表による講和条約の調印が今にも行われようとしていた…。
その時、火星の代表団の一人が慌ただしく室内に入って来て、火星の全権大使に何やら耳打ちした。
その途端、火星の大使の顔は見る間に険しくなり、ありったけの軽蔑と敵意の視線を地球の全権大使と彼の部下達に向けて言い放った。
「このような欺瞞に満ちた文書を私は未だかつて見た事が無い!!」
そう言って火星の大使は講和条約の文書を掴み取ると、地球の代表団の目の前で破り捨てたのである。
「「「…っ!!?」」」
驚いたのは地球側の代表団である。
地球の大使は言った。
「な…何という事をなさるのですか!?」
火星の大使は答えた。
「ご自分の胸に尋ねてみればよろしいのでは!!」
「「「…!?」」」
地球側の代表団は訳が解らない。
ただ火星の大使と彼の部下達が怒り心頭で立ち去るのを呆然と眺める事しか出来なかった…。

翌日、火星政府は国営放送(と言ってもその一局しか無い)にて地球の“卑劣さ”を激しく非難し、同時に全軍に臨戦態勢を命じた。
後に“第二次火星戦争”と呼ばれる戦いが始まった瞬間であった…。


‐数日後、地球‐
連合宇宙軍総司令部に出頭を命じられたクリスは、お供にカナメを連れて総司令部に赴いた…。

「君が第三方面艦隊所属、戦艦リリウム艦長、クリス・ライオネット大佐かね?」
「はっ!クリス・ライオネット大佐、召還命令に応じ出頭いたしました」
彼女の前には将官クラスのお偉方がズラリと顔を揃えている。
一緒に来たカナメは完全に萎縮していた。
(ひえぇ〜、偉そうな人達がいっぱい…なんか今にも軍法会議でも始まりそうな雰囲気だなぁ)
クリスもカナメも何故呼び出されたかは解っている。
一人の将官が口を開いた。
「…さてライオネット大佐、今日ここに君を呼んだのは他でもない。先日、君の艦は火星宙域を威力偵察中、火星軍艦艇と戦闘状態に入り、これを撃沈した…この点に関しては間違い無いね?」
「はっ!間違いありません」
「うむ…問題はここからだ。先に手を出したのはどちらか…君の報告によれば、火星軍が先に攻撃して来たとあるが…この点も間違い無いかね?」
「はっ!提出した航海日誌にも記載されている通り、火星軍艦艇が本艦に対して先制攻撃を仕掛けて来ました。間違いありません」
「なるほど…そこの少尉」
「は…はいぃっ!!!?」
急に自分にふられたカナメはカツーンッと勢い良く踵(かかと)を鳴らして直立不動の姿勢を取る。
ちなみに今も彼は女装のままだが、それに対して不審の目を向ける者は幸か不幸か誰一人としていなかった。
将官は尋ねる。
「ライオネット大佐の証言に間違いは無いかね?」
「え…えっとぉ…あの…そ…それは…」
クリスは小声で囁いた。
(カナメちゃん…「間違いありません」と言って…お願いだから…)
(艦長…)
…そうだ、クリスだって艦の皆を守るために自分の良心に蓋(ふた)をして嘘をついているのだ。
戦争は始まってしまったのだ…今さら真実を明らかにして何になる?
カナメは覚悟を決め、ゴクリと唾を飲み込んで宣言した。
「ま…間違い…ありません!!」
「…そうか、解った。もう帰ってよろしい。ご苦労だったね」
「……」
意外にアッサリ信じられ、カナメは拍子抜けする。
こんな簡単で良いのか…。

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