改造実験〜堕ちる女達〜 9
「あぁっ…♪あぁっ…♪…はい、クイーン…いえ、与えられるなら…貴女に名前を与えたいわ…可愛い私の赤ちゃん…ふふ、でも、貴女は皆を愛する存在ですものね?…」
少し寂しそうにつぶやく裕子に頭を振って、クイーンはその言葉を否定する。
「そんな事はないわ、お母様…これからもよろしくね?貴女はずっと私のお母様ですもの…たくさん求め合って…愛し合いましょう?」
裕子は救われていた、今まで誰もかけてくれなかった…
いや、そう思わされているにせよ、クイーンの言葉は立場を逆にするかのように、全てに降り注ぐ慈悲のように聞こえ、次第に祐子の頬には涙が伝っていた。
「は…はい…ありがとう…クイーンちゃん…なら…マユと呼んでいいかしら?貴女は…そう、全ての可能性の繭だから…」
「ええ、お母様…マユは幸せよ?こんなに愛してもらえて…これからもよろしくね?」
抱擁を受け入れながら裕子はそのまま泣きじゃくり…マユとまぐわり果てるまでの幸せな時間が続く事を、ただひたすらに願っていた。
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実験者No.3 「村雨 晃」
「な、なんなんだよアイツっ!く、クソっ!こんなの聞いてないぞっ!!」
晃は焦っていた、無理もない、今晃は命の窮地…少なくとも本人はそう感じるような場面に遭遇していたからだ。
晃が所属するバスケットボール部のインターハイの帰り道、バスがトンネルに入り、次の瞬間にタイヤがパンクし、タイヤの修理に向かった運転手は…次の瞬間に消え、ケータイも繋がらず、半ばバス内がパニックになり、気づけばメンバー達は散り散りに脱出していたが、声もなく一緒に逃げ出したメンバー達は一人、また一人と消えていき、気づけば晃はひとりぼっちになっていた。
トンネルの出口は相変わらず見えず、辺りには消えたメンバー達の荷物が転がる中、晃は汗を拭い深呼吸をした。
その次の瞬間、目の前にきらきらとした糸が漂うのを晃は見逃さなかった。
「そこぉっ!」
晃は手に持っていたバッグを投げつけるのに合わせ、バスの影に隠れていた「それ」は姿を表した。
「あ〜ら、なかなか鋭い子ねぇ…人間にしておくのはもったいないわぁ…直々に食べちゃおうかしら?」
カサカサと複数の腕を動かし、複眼を使い此方を見つめるのはジョーカーの怪人のスパイダー・オリジナル…秋本由子だが、もちろん晃はそんな事を知る由もない、その姿に怯え、かちかちと歯をならしながらも、スポーツ選手らしい気概か手には誰かのお土産なのか、落ちていた木刀を握りしめ、そのままスパイダーに対峙する。
「お…お前がみんなをっ…こ、この化け物っ!よくもやりやがったなぁ!」
「あらあら…皆生きているから大丈夫よぉ?ほら、見なさい…これからあなた達は偉大なるジョーカーに選別されるのよ?…ふふ、貴女も私と同じ怪人になるのかしら?」
「ふ、ふざけんなっ!このっ!来るなら来いっ!」
余裕で話しかけるスパイダーに対し、晃は焦った様子を見せるが…思考は極めて冷静だった。
(この化け物が話している隙に逃げ出そう…)
げんに晃は後ずさりするもスパイダーは気づかずに、自らがトンネルの天井に手がけた芸術的なオブジェ…巨大な蜘蛛の巣に気絶し糸にくるまれ服を溶かされながら、卑猥なポーズを取らせ、ぶら下げられている少女達を自慢している真っ最中だ。
「ふふ…貴女をあそこに加えるのは最後にしてあげるわ…降参すれば優しくー」
(今だっ!)
瞬間、晃は手に持っていた木刀を投げつけ、スパイダーの目にぶつけた。
「ぎゃんんっっ!?!!」