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闇の牙―牝狼―
官能リレー小説 - SF

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闇の牙―牝狼― 8


ベットの上には…。
肩まである栗色の髪を後ろに束ね。
額や腕に包帯を巻いた少女が寝そべっていた。
瞳の大きい可愛いらしい少女…美紀だった。
だが、そのつぶらな瞳には虚ろな光が灯り。
治療用の寝間着の合わせを肌けさせ。
夢中で自分の股ぐらを擦っていた。
当然な事だが聴こえてきていた声は。
美紀の唇から漏れている物だった。
「運ばれてから…ずっとこうなの」
後ろ手に病室のドアを閉めながら…美央が囁いた。
まるで恵理奈を試している様な響きだ。
「薬物?」
だが…恵理奈の声には何の変化もない。

「いえ…薬物反応はなかったわ」
「ふ〜ん…じゃあ、なんでこんなにオナってんの?」
確かに恵理奈や美央の存在など気にとめる事なく。
一心不乱に自慰に耽る美紀。
だが恵理奈の言葉にそんな美紀に対する憐れは欠片もないようであった。
やはり自分が思った通りだ…美央はそう思いながら。
「おそらくは…耐えきれない様な恐怖からの一時的な自己逃避ではないかしら」
医師としての言葉を告げた。
「治んの?」
恵理奈の言葉…美紀を心配してでの言葉ではないようだ。
「時間が経て、恐怖が薄らげば…」
これも医師として。
そんな淡々とした会話の中、恵理奈は美紀の喘ぎに混じったウワ言に聞き耳を立てていた。

その唇から時折『雅人』という名が漏れる。
恵理奈らが現場で何一つ聞かされず、表向きのニュース『不良少年がカップル襲撃』と、後から知った名前だった。

刺殺か射殺か撲殺か、オカマのひとつも掘られて直腸破裂でも起こしたのか、死因の詳細すら知らない。
恵理奈の扱う事件とは無関係とばかり一般警察の側で手際良く鑑識と検死に回され、遺族の元に帰されたのだろう。

恵理奈は取り敢えず『何時もの事』だと解釈しておいた。


そして…この時の恵理奈の頭の中にあったのは。
あの残虐な殺人を犯した犯人の事だけであった。
犯人を捕まえる事?いや犯人を殺す事であるのかも知れない。
だから…美央の方を向くと。
「どれくらいで正常に戻るの?」
美央はその言葉に両肩を竦めてみせた。
やれやれっといった感じで頭をガシガシと掻く恵理奈。
無表情のまま美紀に歩み寄る。
そんな恵理奈を気にもとめず、開いた口許に涎を垂らし自慰に耽る美紀。
その美紀の頬を平手で張り飛ばした。
「な!なにしてるの!」
医師としての美央が驚いた様な声を上げた。

しかし…美紀はグラつきながらも自慰を止めない。
更に右手の甲で美紀の頬を叩く恵理奈。
サディストと言う言葉では括れない恵理奈の姿。
女の美央はゾクゾクと身震いする程の興奮を覚えているが…。
「何してるの!」
医師として、恵理奈の行動を止めに入った。
「ショックを与えれば…正常に戻る」
静かだが力強い声と同時に美央を振りほどく恵理奈。
そしてもう一発。
自分の股ぐらをまさぐる美紀の手が止まった。
美紀の乱れた髪を掴み…冷たい瞳で虚ろな瞳を覗き込む恵理奈。
不意に美紀がガタガタと震えだした。

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