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闇の牙―牝狼―
官能リレー小説 - SF

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闇の牙―牝狼― 6


両肘をテーブルにつき。
両手で持ったチーズバーガーにかぶりつくその様は…。
まるでファーストフードのCMの様であった。
そして…。
口の端にケチャップを付けた恵理奈が。
ふいに自分が噛ったチーズバーガーを清吾の方に突き出した。
流石にこれにはドギマギとしてしまう清吾だったが…。
「肉片に付いてた歯形…これくらいだった」
恵理奈の口をついたセリフに。
減なりと顔をしかめた。
「それに…あの肉片は三人分にしては少ないし」
恵理奈はそう言うとチーズバーガーを自分の口許に戻し…また一口かぶりついた。
もふもふとハムスターにも似た可愛いらしい咀嚼の合間から溢れたデリカシーの欠片も感じられない物言い。
清吾は一瞬眉の辺りを歪めたが結局は『もう慣れました』という具合に溜め息をついておく事にした。



池袋地区にある警察病院。
街の中心部より、やや離れた場所にある古い病院ではあるが。
数多ある病院の中でも比較的、まともな病院であった。
正門にも、裏門にも警備ボックスがあり。
昼夜を通して数名の警官が詰めている。
その正門にある警備ボックスの前に特殊警ら車両を停止させた清吾。
流石に此処は顔パスといかず。
身分の証明をする恵理奈と清吾。
数秒のチェックの後、正門のゲートが開いた。

警備の人間に案内された恵理奈と清吾。
待合室で待っていると。

「お待たせしました」
二人の前に現れたのは一人の女医だった。
「どうも…」
清吾は身分証を提示しながら女医を観察した。
年の頃は清吾よりやや上くらい。
黒いショートボブよりもオカッパに近い髪型をしていた。
奥二重で切れ長な吊り目に黒縁の眼鏡をかけていた。
鼻も細く唇も薄い。
美人の部類ではあるが細い身体と顔つきが冷たい感じを与える女だった。
「あの…今朝方、運び込まれた少女は?」
清吾はニコリともしない女医の眼鏡の奥の眼を覗き込んだ。
無愛想な女には恵理奈で慣れ親しんでいる清吾だったが。

女医は清吾を軽く受け流すと恵理奈を見つめた。
相変わらずの冷たい視線であったが。
それに関しては見つめ返す恵理奈にしても同じ事であった。
そして女医が…。
「貴女も警察の方よね?」
恵理奈を知らない者にしてみれば。
これは至極、自然な質問でもあった。
恵理奈もこの手の質問には手慣れたものである。
ウダウダ言う事もなく黙って身分証を。
その小顔の横に掲げてみせた。
「失礼しました…では、貴女だけ来て頂けますか?」
身分証を確認する女医も努めて冷静だった。
だが…冷静でいられないのが清吾だ。

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