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闇の牙―牝狼―
官能リレー小説 - SF

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闇の牙―牝狼― 36

柏木の話では惨殺された三人のチンピラは…。
中国大陸系の組織と深い繋がりを持っていたとの事であった。

これは日本の組織暴力団全てにおいての傾向だが。
彼らは中国大陸系の組織に対しては完全な事無かれ主義を貫いていた。
中国大陸系の組織もまた日本での活動を黙認されている以上は無謀な真似はしなかった。
ただその無謀な真似と言うのはあくまでも暴力団レベルの話である。
また中国大陸系の組織と言っても多種多様あり。
三人のチンピラはその勢力争いに巻き込まれたのではないか。
それが柏木の読みであった。



それ以上の立ち回りもなく店を後にした恵理奈と清吾。

「大陸系の組織ねぇ…」
特殊警ら車両のステアリングを握りながら…。
何処か茶化したように呟く清吾。

「………」
『わかば』を吹かしながら窓の外の…。
流れる景色を睨むように見つめている恵理奈。
清吾の言葉には全く反応していなかった。


その頃…。
柏木もまた店を後にするところであった。

それは全くの偶然だった。
アルバイトを終えた冴子。
地下の店から上がってきた柏木とスレ違った。

その瞬間。
立ち止まり俯き顔をハッと上げる冴子。

廃墟に限りなく近いビル群に囲まれた。
ゴミゴミとした雑多な路地ですれ違う冴子と柏木。

通り過ぎた瞬間。
背中と背中を向けあったまま。
ハッと顔を上げた冴子の心臓が…。

ドクン!

大きくひとつ高鳴る。

フゥゥゥッ――。

冴子の口から流れ出る白い靄。
息が白く色づく程冷えた外気ではない。
怒気…憎悪…。
負の感情が白い靄となって冴子の口の端から流れ出ているのだ。

そして冴子の瞳。
眼鏡の奥の瞳に金色の光が。
殺意の光が宿りだす。
口許から覗く両の犬歯も。
冷たい光を放ち…。
みるみるその存在感を増してゆく。
そのまま例の…!?

が再び顔を伏せ。
細い肩を。
同様に細い全身をブルブルと震わす冴子。
再び上げたその蒼白な顔からは…。
異形の兆しはすっかり消え失せていた。

そして眼鏡を外し。
無造作に束ねていた髪を解く。
顔を軽く振って解いた髪をふんわりと広げると。
格好こそ野暮ったいままだが……。


「ねぇ…」

「あっ!?」
不意に背後から声を掛けられた柏木。
振り返ると…。

切れ長の大きな瞳。
柳の葉のような眉。
スッと高い鼻筋。
そして艶めかしい赤い唇。

「なんだ?」
低い声で問い掛ける柏木。
だがその細い双眸には好色の色が灯っている。

この街で女から男に声をかける。
それはひとつの事しか意味していなかった。

無論、今の冴子。
そんな商売の女と程遠い身なりはしたまま。
だがその妖艶過ぎる容姿の前にそんな身なりなど、すっかり霞みきっていた。

その冴子にズカズカと近づく柏木。
少し前の地下の店でのやり取りを考えると不用意極まりなく思えなくもないが。
あの程度の事はよくある事なのか。
冴子の魅力がそうさせるのか。
完全にガードが下がっている。

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