闇の牙―牝狼― 19
「あははっ!いいわよ!あぁ!最高っ!」
低く震える笑い声を上げる美央。
その細い指先は。
トロトロと熱い蜜を滴らせる、淫らな花弁の間を。
卑猥な音を立てて擦り上げていた。
立ったまま股を開き、前屈みに顔を入院患者の方に突き出す女医。
病院ではよくある風景だった。
入院患者が女医の頬を叩いている事を除けば。
女医が白衣はおろか服を着ていない事を除けば。
更にその剥き出した卑猥な股ぐらを擦り回しいる事を除けば。
病院でよく見る日常の風景。
それが一変し。
狂艶の風景に様変わりしていた。
そして、その狂艶の主役である女医は…。
泣き崩れる美紀の顔に日中に見た女刑事を。
冷たく可愛らしい女刑事の顔を重ねている。
そして…。
「もっと!お願いします…私を叩いて」
左手で美紀の肩を掴み激しく揺さ振る美央。
右手では股ぐらをまさぐり続ける美央の声は。
激しいさと打って変わってすがりつく様な響きであった。
恵理奈のマンション。
愛欲に狂った女医が思いを馳せる狂暴な女刑事は…。
読み終えた少女漫画を胸に抱きしめ。
斜め上を見上げる様な瞳でニヤニヤと口許を弛めていた。
まさか…。
そのまさかであった。
今の恵理奈。
少女漫画の主人公と自分をダブらせ。
淡い恋の妄想に耽っていたのだ。
普通の女の子なら可愛らしい妄想であったが…。
もしこの漫画が映画化されたなら…。
主役に抜擢されても全く遜色ない恵理奈であっても。
昼間は平然とチンピラの顎を握り潰した恵理奈だ。
そんな恵理奈のそんな妄想…やはりどこか異常であった。
警察病院。
「あっ!あっっ…」
美紀の肩を掴んだ女医は切なげな声をあげながら…。
夢中で自分の股ぐらを擦り続けていた。
その狂気は美紀に伝染し始めていた。
「いぃぃぃぃ!」
引きつった様な甲高い悲鳴を上げる美紀。
握りした小さな拳。
その拳を狂気の女医の鼻柱に叩きつけた。
「ああっ!!」
目の奥がスパークする様な感覚。
脳天にズンとした衝撃を受け。
美央は後方に尻餅をつく様にひっくり返った。
鼻の奥がツンとして…。
涙がボロボロと流れ出てきた。
胸の谷間に生温く、粘りつく様な感覚を感じた。
霞みかかった切れ長の瞳で虚ろに見下ろすと。
鼻梁に溢れ出た物がポタポタと。
赤い滴りを作りだしていた。
茫然と視線の先を美紀に戻す美央。
その口から…。
「あはっ!あは…あはは…あははっ」
聞く者の肌を粟立てる様な狂人の笑いが漏れ出ていた。
「いやぁ!いやぁぁぁ!」
かたや美紀は…。
フラッシュバックする恐怖。
取り戻した記憶にガタガタと震え。
絶え間なく続く甲高い悲鳴を上げている。
そして…再び。
自分の股ぐらへとその手を伸ばしていた。
熱く濡れた股ぐらに…。
そして美央はベタッと床に座り大きく股を拡げていた。
「あははっ!あはは!」
狂人の笑いを止める事なく。
濡れ開いた淫猥な亀裂をグチュグチュと擦り続けていた。