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闇の牙―牝狼―
官能リレー小説 - SF

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闇の牙―牝狼― 13

凶悪な牙を剥いたまま。
構成員達が左右に割って広がる。
その先には太い声の主。
金髪でウェーブのキツいセミロングヘア。
紺色のイブニングドレスに身を包んでいる。
そして…その顔は。
昔、怪談話で一時、一斉を風靡したお笑いタレントに似ていた。
同じ様な黒々とした口髭まで蓄えている。
またイブニングドレスの胸元に乳房の膨らみはなく。
やはり立派な胸毛が顔を覗かしていた。
今の時代、性転換手術を受ける者は少なくない。
だが恵理奈と清吾の前にいるのは。
身体は完全に男のまま。
昔ながらのオカマだった。

このオカマこそが新宿イチ、狂悪なオカマ。
金龍会組長…金原龍士であった。
「どうしたの?可愛い刑事さん…私に抱かれる気になったの?」
嘲る様な挑発をしながら恵理奈に近づく金原。
ひひひ――。
俺達にもやらせろよ――。
ひぃひぃ言わせてやるぜ――。
周りにいる構成員達も口々に恵理奈を嘲る。
だが…怯むはずもない恵理奈。
汚い物を見る様に目を細めると。
「キモいんだよ…オカマ」
やはり静かな声だった。
が…金原はオカマと呼ばれる事を何より嫌っていた。
「殺して犯すぞ!」
本性を剥き出しにする金原。

だが手を出す真似はしない金原。
清吾もだ。
恵理奈に至っては例によってジャケットのポケットに両手を突っ込んでいる。
無闇に相手の身体に触れる事は死を意味する。
その事をこの場にいる全員が知っていた。
一人を除いては…。
そのチンピラは西からの流れ者で。
金龍会の世話になり始めて1ヶ月も経っていかなった。
「あんまり舐めてんじゃねぇぞ!」
チンピラはヘラヘラと笑い。
ジャケットに包まれた恵理奈の乳房を鷲掴みにした。
チンピラ本人にしてみれば、組長にいい所を見せたつもりだったのだろうが…。

「ばっ…」
制止しようとする金原だが僅かに遅かった。
顔色がにわかに変わる。
かたや服の上からとは言え乳房を鷲掴みにされても。
顔色ひとつ変えない恵理奈。
逆に左手で流れ者のチンピラの顎を掴み返していた。
「あがっっ…」
流れ者は片手で己の顎を掴む恵理奈の左手。
その手を除けようと藻掻く。
しかし流れ者をホールドした恵理奈の左手はビクともしない。
「あらら…知らないよぉ」
焦る金原を今度は清吾が挑発する。
そして。
「こいつ…バカ?」
流れ者の事は見ずに金原を射る様に見つめる恵理奈。

苦々しく眼前の状況を見つめる金原。
確かに流れ者のチンピラはただの馬鹿だ。
恵理奈の好きにさせるしかなかった。

「うぐっ…」
顔を歪めた流れ者のチンピラ。
恵理奈の乳房から手を離し…両手で恵理奈の左手首を掴む。
が…それでも恵理奈の左手は外れない。
それどころか。
益々、万力の様に流れ者の顎を締め上げてゆく。
「あぐっぅ」
流れ者の顔の歪みに苦痛の色が伴う。
そしてバチッと嫌な音を立てて。
流れ者の数本の奥歯がへし折れた。
「あだぁぁぁ!」
不自由な口で悲鳴を上げる流れ者のチンピラ。

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