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闇の牙―牝狼―
官能リレー小説 - SF

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闇の牙―牝狼― 12

何の話か理解出来ず、清吾が眉をひそめた所で恵理奈は、新たな『わかば』を一服点けながら噛み砕いた説明を加えた。

「獣が獲物にカブリついてて、たまたま鉛弾をガリッて噛んだ、どうする?」
「何だこりゃって吐き出すだろうな…。」

雅人が美紀を守る為にチンピラ(金龍会準構成員)と応戦。

雅人は死亡、美紀は強姦被害。

そして謎の第三者が現れ正体不明のショータイム。

しばしの脳内検索の後、事件の粗筋をようやく理解した清吾が、ようやく『ボクわかったよ先生!』と不謹慎な笑顔を浮かべた。

しかしくわえ煙草の恵理奈は。
そんな清吾の笑顔を丸っきり無視して。
鑑識レポートの最後の一文に目を走らせていた。
そしてボソッと。
「犯人の痕跡はひとつだって…単独犯…か」
「えっ!たった一人でヤクに狂ったチンピラを三人も惨殺したってぇの?」
笑顔から驚きの表情に変わる清吾。
無理もなかった。
相手は只でさえ凶悪な金龍会のチンピラだ。
しかも『クラック』。
服用した者の狂暴性を促進させる効果があった。
場合によっては肉体的な痛みを感じなくなる事も稀にある。

しかも『雅人』が放った旧型ニューナンブの弾頭の着弾先を考えると。
三人のチンピラの中にその稀な奴が混ざっていた可能性も否めない。
そんな連中を一人で殺る事は可能だろか?
結果は恐らく……『雅人』の例を見れば判る。
「何にしても金龍会にお邪魔しないと」
驚き続けている清吾。
その驚愕を恵理奈が断ち切った。
「オッケェ!タカ!」
切り替えが早いのか…。
清吾は自分が生まれるより前の刑事ドラマを真似る。
この手のドラマが大好きな清吾であったが…。
「フン…」
恵理奈には鼻で笑い飛ばされていた。

蕪木町4丁目通り。
新宿蕪木町が東洋一の歓楽街として栄えていた頃。
その時代のメインの通りが此処であった。
今の有様は言うに及ばずではあるが…。
その通り面したブロックのほぼ中心にそのビルはあった。
4階建て古ぼけたビル。
ビルの名は金龍ビル。
金龍会の本拠地出会った。

「なんだ!てめぇ!」
「ざけんな!ごら!」
1階に居たチンピラ達の制止を歯牙にも掛けずに。
ピータイル貼りの狭く薄暗い階段を駆け上がる恵理奈と清吾。
その勢いのままに最上階の事務所のドアを押し開いた。

「きさま!」
「ぶち殺すぞ!こらぁ!」
思い思いにクダを巻いていた金龍会構成員。
弾かれた様に立ち上がると…事務所に飛び込んで来た恵理奈と清吾を取り囲んだ。
誰もが狂暴極りない眼差しで二人の刑事を睨みつけている。
それらをその身に受ける恵理奈と清吾。
恵理奈は刃の様な冷たい視線で。
清吾は眉間にシワを寄せ、今にも殴り掛からん勢いで。
構成員達を睨み返している。
「退きなよ…」
全く気負いのない恵理奈の可愛い声。
しかし得体の知れない迫力を孕んでいる。
「通してあげなさいよ」
と嘲る様な太い声。

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