モンスターハーレム 176
そう言って何気なく下を見てみると。
そこには真っ青な顔で息を切らせる狭霧の姿があった。
さっきクッションだと思ってたのはコイツだったのか!?
オレは意味のない謝罪を口にしながら、あわてて彼女の上から身体をどけた。
「お、おまっ・・・!病人に人間放り投げるなんて、それでも医者かっ!?」
「あいにく私は医者ではなく科学者だよ。
さて、それでは彼女を救うための術を教えてやろうか」
オレの非難などそよ風のごとく受け流したサルスベリは、実に楽しそうな様子でオレが意識を失っていた間のことを説明しだした。
「オマエが倒れた後、魔兎族の娘とそこの人間が倒れた。
付喪神とスライムの娘は元気だ。
どうやらあの2人は種族的な関係で毒ガスが効かなかったらしい」
そうか・・・。あの2人は無事なのか。よかった・・・。
しかしスライムの娘がラムレーネなのはわかるが、付喪神だから毒が効かないってどーゆーことなんだ?
今すぐそこを問いただしたいところだが、狭霧とこの場にいないミミのこともあるので話を進ませる。
「血を吐いたものだから少々驚いたが、魔兎族の娘は毒消し草などの薬物投与で何とか回復。
今は別室で休ませている。
だがこの人間に関してはどうすることもできん」
「な、何で!?」
オレの疑問に、サルスベリは至って冷静に、かつ完結に答えた。
「人間だからだ。
その人間は神聖魔法で解毒しようとしていたが・・・コイツは人造とは言え魔王の力を甘く見ていたのさ。
今、コイツの身体にはオマエの毒ガスがゆっくりと侵食している。
魔物なら驚異的な生命力を発揮して命をつなぎとめられるだろうが、人間であるコイツに助かる術はない」
オレはその言葉に、殺気を孕んだ視線でサルスベリを見る。
味方を殺しかけている自分のマヌケさと無力さ、そしてサルスベリの持って回った言い方に怒りを覚えたのだ。
「さっさと言え!どうすれば狭霧は助かる!?」
そう。コイツは知っているはずなのだ。
オレだけが彼女を救える方法を。
事実、サルスベリはその言葉を待っていたと言わんばかりにその唇の端を大きく吊り上げた。