モンスターハーレム 172
ヤツは信じられないものを見たかのようにオレとナイフを交互に見やり、せめて道連れにしようとしたのか、震える右手を虚空に伸ばす。
「・・・ッあ・・・」
しかしその手はオレに届くことなく、オルゾスは倒れ伏す。
ふう、うまくいったか。
毒ガスをブレンドした血液をナイフで直接体内にブチこんでやったんだ、弱っていた今のアイツにはひとたまりもないはず。
し・・・しかし、あのバカ、ずいぶんいろいろと溜め込んでやがったんだな。
後で2度とこんなことしねえように、たっぷりと調教してやんなきゃ・・・な・・・。
「・・・ッ、ご主人様ッ!?」
オレの異変に気づいたオリオールが、慌てて声をかける。
バカ野郎、だから気づくのが遅えってんだよ。
次の瞬間、オレは全身に走る激痛に、意識を深い闇の中へと沈めていった。
あー・・・くそ。何でこんなことやってんだろ。
魔王がどーとか、そんなことオレはこれぽっちも興味ねえってのに・・・。
消え行く意識の中、オレはふとそんなことを考えていた。
――――
「・・・ん・・・あ・・・?」
次に目覚めたとき、オレはベッドの上で寝転がっていた。
霞がかった脳みそを懸命に動かして、なぜ自分がここにいるのかを思い出す。
えっと・・・なんでオレはここにいるんだっけ?
「・・・って!!」
テスのH、オルゾスの暴走、それによる負傷。
そしてオレの言いつけを守らずに傷ついたミミと狭霧。
一気に活性化した脳は、オレに気を失う前の全ての記憶を見せてくれた。
オレはすさまじい勢いで飛び起き・・・。
ピキピキピキィ・・・ッ!
「だっ・・・!?がっ・・・くおあ・・・ッ!?」
とてつもない激痛がオレを襲った。
い・・・痛えっ!?ひ、悲鳴も出せねえくらいに痛えっ!
わずかに動くだけで激痛が走り、オレはなす術もなくベッドから転げ落ちる。
しかし悲劇はまだ終わらない。
転げ落ちた衝撃でさらなる痛みが転がり、それに悶えたせいで痛みをさらに追加されるという地獄のサイクルがしばらく続く。
いっそ死んだほうがマシかと思えるくらいの痛みは、様子を見に来たリザが来るまで続けられた。
「キャーッ!?ラグ様、一体何やってるんですかッ!?
助かったとは言え、まだ病み上がりなんですよ!?
ベッドでおとなしくしててくださいッ!」
悶絶するオレを見て悲鳴を上げたリザは、慌ててオレをベッドに戻す。
り・・・リザさんや、病み上がりだとわかっているのなら、もっと優しく丁寧に運んでください。
声にならない悲鳴を上げながら、オレは心の底からそう願った!
しかしそんなオレの心の声が彼女に届くはずもなく。
リザは『サルスベリ様を呼んできます』と言い残して早々に部屋から出ていってしまった。