モンスターハーレム 145
こんなデタラメな攻撃、普通なら防御と回避に集中してやり過ごそうとするのが普通だろう。
しかし今のオレは暴走した愚かな獣。
オレは我が身も省みずに最短距離で標的の元へ突っ走る。
広範囲の攻撃を仕掛けたせいだろうか。
テスはうつむいたままその場から動かない。
ドシュッ!ズガッ!ズバンッ!
オレは飛んでくる石の槍の無視し、時折壁となった石の槍を切り裂きながら前進する。
そして―――!!
ズガゴォンッ・・・!!
石槍の嵐が治まり、石の壁で覆われたあたり一面は静かになった。
「グッ・・・!ガッ・・・!?」
「・・・ふふ。一歩・・・足らず・・・か」
林立する石の槍に開けた小さな空間。
その中で、オレの放った渾身の突きはテスの胸に突き刺さっていた。
どれだけしぶといのか、貫通しなかっただけでもすごいのに、まだ話せる余裕があるらしい。
『鉄壁』の異名は伊達ではないということか。
だがこちらもそれなりの代償は支払うこととなった。
右足の太ももには短く細いながらも鋭い石の槍が深々と突き刺さっている。
これでは戦闘はおろか、まともに歩くことさえ怪しい。
まだオルゾスたちが残っているのに、これはデカい代償だった。
オレが苦々しい表情でテスをにらみつけると、彼女は敗北者とは思えない、優しい微笑みを向けながらオレのとどめの一撃を待っていた。
「・・・どうした?勝負はすでにおまえの勝ちだ。
後はその剣を振り上げるなりすればそれだけで事足りる。
さあ、早くとどめを刺してくれ」
死への恐怖を微塵も感じさせないその微笑みは、オレの心を妙に刺激した。
とどめを刺さないことに何か勘違いをしたのだろうか、徐々にテスの表情に不満と苛立ちが表れ始める。
「・・・何をしている?
まさかここまで来て、私を殺すのが惜しくなったなどと言わんだろうな!?
断っておくが私は貴様の軍門に下るつもりなどない!
今、とどめを刺さねば、背後から私の槍が貴様を襲うぞ!?
さあ、早くとどめを刺せ!」
だがオレは動かない。別に殺すのがイヤだとか、そんな理由ではない。
ただ、死に急ぐコイツの態度が気に食わなかったのだ。
豊潤な魔力がそこにある。
しかしコイツからそれを奪ったところでオレの勝利にはならない。
この女は何よりも死を望んでいるから。
むしろ殺せばコイツは喜び、どっちが勝者だかわからない気持ちになるだろう。
かと言ってこれほどの相手を放置しておくことはできない。
・・・よし。殺さない程度にしておくか。
オレはそう決めるなり早速獲物の調理にかかる。
まずは下手な抵抗ができないように、首筋に噛み付く。
「く・・・うンッ!?」
そして犬歯を突きたて、血液ごと魔力をすする。