モンスターハーレム 107
「・・・ふん。おまえは私の獲物だ。
それを横からかっさらうようなマネが許せなかっただけだ。
忘れるなよ。おまえを殺すのはこの私なんだからな」
オルゾスはそう言うとミミを連れ、ロープを取りに部屋のほうへと戻っていった。
このときオレは気づいていなかった。
部屋に戻るオルゾスの耳が赤く染まっていたことを。
彼女がオレを助けたのは、自分がつがいとして認めたオレが死ぬなんて許せなかったからだということを。
そんなオルゾスの気持ちにオレは気づかない。
心のうちからわきあがってくる『何か』を抑えるのに精一杯で。
それは混沌とした感情。
助太刀に入ってくれたことを感謝したいのに、心のどこかでそれをやめさせようとする感情がある。
人間に心を許すなと警戒を発するオレがいる。
「・・・どうされた?ずいぶんとお加減が悪いようだが」
オレの様子がおかしいことに気づいた狭霧が声をかける。
やばい。落ち着け。ヤツは味方だ。
なぜそんなことがわかる?相手は人間だ、オレたち魔物の敵だ。
だがヤツは助けた。オルゾスの本当の姿を見ても、なお。
オレはグチャグチャになった頭で何とか自分を保ちつつも口を開く。
「・・・悪い。ちっと傷が響いて、な」
「む。確かにだいぶやられているな。
よければ私の持っている薬草をやろうか?」
「いや、いい。オレの知り合いに医者がいるから、ソイツの世話になるとするよ」
オレはとっさに言い訳した。
幸い連中にやられた傷や怪光線の出しすぎで全身ボロボロだったせいもあり、相手はアッサリ納得してくれた。
「さて。オルゾスたちはまだかな?
こいつらにはいろんなことを吐いてもらわないと、な」
オレは胸の奥でくすぶる不快な感情のはけ口となるであろう、気絶したデビルたちを見下ろしながらそんなことをつぶやいた。
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「・・・ほう。今日はずいぶんと大人数で来たものだな」
「そう言うなよ、サルスベリ。
今日はそっちにとっておいしい話を持ってきてやったんだから」
「・・・ふん。まあいい。さっさと部屋に入れ。
簡単な治療くらいはしてやる」