淫魔界にようこそ 49
「・・・失礼。もしかしてあなたは何も知らないまま、あの淫魔たちに連れて来られたのか?」
「は、はい・・・。そ、そうですけど・・・?」
その瞬間、3姉妹の目に剣呑な光が走る。
彼女たち淫獣人族は身体能力に特化した部族で、世界と世界を渡るような、大した魔法技術は持っていない。
しかし淫魔族と戦ったこともある彼女らは、それが何を意味しているのかを十分に理解できた。
「大ネエ・・・どうする?」
最初に沈黙を破ったのは末っ子のテト。
小ネエも何も言わないものの、気持ちは一緒らしい。
雄介に哀れみすら感じさせる視線を送りながら、姉の言葉を待っていた。
そして大ネエの出した答えは。
「・・・我らにはもはや戻る道はない。
かわいそうだが、彼にはありのままを伝えたうえで我々に協力してもらおう」
その言葉に、自分が何かとんでもないことをしてしまったと勘違いした雄介は、外には淫獣たちが待ち構えているというテトの警告すら忘れて外へと飛び出した。
しかし相手は人間ではない超常的な存在。
テントを出ると同時に雄介はあっさりと取り押さえられた。
「は、放せっ!放せぇっ!?」
「おとなしくしろっ!1人で淫獣の徘徊する森に出るつもりかッ!?」
身の危険を感じ、じたばたと暴れていた雄介がそう言われて見た世界は。
自然にあふれていながら、どこか終末の世界を感じさせる、そんな光景だった。
森にぽっかり開いた空間。むき出しにされた赤茶けた大地。
そのところどころには半ば朽ちかけたテントが建っており。
さらにそのまわりでは、木の十字が打ち立てられた赤土の山が無数に林立していた。
まるで戦場の跡地か墓場と化した廃村。そんな光景が雄介の目の前に広がっていた。
「こ・・・れ、は?」
「・・・これが私たち淫獣人族の村の現状だよ、少年」
テトと小ネエが雄介を押さえつける中、大ネエが静かにそうつぶやいた。
彼女は何気なく近くの土饅頭の十字架に手を伸ばし、触れる。
「我々はこの世界ではめずらしい、オスとメス2種類が存在する一族だったのだよ。
そしてそれゆえに淫魔たちから狙われ・・・このとおりだ」
さて、諸君。突然だが淫魔のトップ5人の会談のことを覚えているだろうか?