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気弱な少年とセクシーな仲間達〜第2章〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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気弱な少年とセクシーな仲間達〜第2章〜 90

「……来ちゃだめだよ………」
また女が呟いた。感情の欠片もない平坦な声。しかし、やはりどこかで聞いたことがあるような気がするのは………なぜだ?
前に進んでも対岸に辿り着けず、かといって引き返す気にもなれず、ただその場に立ち尽くすしかない大和であった。



「撤退するだぁ、ふざけてんのかエルザト!!!」
エルザトの撤退命令にブリガンディが激昂した。なにげに地団駄までしている。この男はなにがなんでも、この場でカルラと決着をつけたいらしい。
「ブリガンディ。私達がシヴァから預かった命令は、太陽の紋章の確保だ。それさえすめば、ここに用はない。後はゴート周辺に待機させている私とお前の部下達に後始末を任せればいいのだよ」
この言葉にカルラの脳裏に不安がよぎった。
(……周辺の部下だぁ?ゴートに来たのは、こいつら2人だけじゃなかったのかよ。それに、後始末か……)
「ゴートを滅ぼすつもりか?」
エルザトはフッと小さな笑い声を上げて、言った。
「ご想像にお任せしよう」
「それは滅ぼすって言ってるようなもんだぜ」
「その通り。滅ぼすことになる」
エルザトは何でもないことのように言ってのけた。そして、
「ブリガンディ。もういいだろう。これ以上の戦闘は貴様の首を絞めることになるぞ」
若干苛立ちがこもった声で叫んだ。
「ああ、どういう意味だぁ?」
ブリガンディが首を傾げながら言った。すると、
「いい加減にしろ!!まだ分からないのか………もうすぐ夜明けだ」
エルザトの言葉にブリガンディが驚愕した。その顔には焦燥の色がありありと浮かんでいる。

(何だ?)
ブリガンディが焦る理由がカルラには分からなかった。しかし、その理由はすぐに分かった。
ピシッ……。
ガラスにひびが入るような音が聞こえた。カルラが上空を見上げ、そして見た。
天空を覆っている青い上空に亀裂が一本入っていた。亀裂はどんどん広がっていき、やがて蜘蛛の巣状に拡大していく。
そして、亀裂が上空全体を覆い尽くしたその瞬間、
パリン。
上空が砕けた。砕けた青い空間が天頂からどんどん消滅していく。
ほんの数秒で、ブリガンディの氷の世界はこの世から消え去った。
「……なるほどな」
カルラが薄笑いを浮かべ、エルザトが舌打ち、ブリガンディは激しく動揺するなど三者三様の反応を見せていた。
「氷の世界の弱点。それは……」
カルラが東の空を指差した。遠くの山と山の隙間から、太陽が半分、顔を覗かせている。
「太陽の光。日光ってわけか」
「………ブリガンディ。氷の世界が使えないようでは、貴様に勝ち目はない。……指示に従え」
有無を言わさぬ殺気がこもった声でエルザトが静かに言った。

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