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気弱な少年とセクシーな仲間達〜第2章〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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気弱な少年とセクシーな仲間達〜第2章〜 220

嘘か真かも定かではない情報が四六時中飛び交い、疑心暗鬼に陥った国民の感情は不安や不満、恐怖で埋め尽くされて、いつ暴動や反乱が起きてもおかしくない状態だったのである。
治安は悪化の一途をたどり、誰もが極限までに追い詰められていた時、少しずつ民衆の間で噂として広まっていったのが、古くから伝わるアルフレドの伝承の1つ、伝説の王だった。
伝説の王の存在がどれだけの影響力を及ぼすのか、作戦を考えるアーカートとティナにもわからない。それだけ、伝説の王を待ち望んでいる人々が多いということである。
「彼は特別な少年だ」
アーカートは目を伏せながら、そう言った。
「確かに」
ティナが頷いた。しかし、彼女は厳しい眼差しで、こう付け加えた。「だけど、あの子はまだ幼い。それに、彼は孤独だ」
ティナは先程の中庭でのやり取りを気にしているようだった。
「君も、大和君の出生が気になるのかい?」
アーカートが尋ねると、ティナはその端正な顔を横に振った。
「他人の過去には興味ない。あの少年が、サンクキングダムの兵器、鉄砲の事を知っていた事に関しては少し気になるが、特に問い質す必要は無いと思っている」
アーカートが頷いた。朝の光の中で、彼の表情はどこか哀しそうに見えた。
「誰かが彼を支えてやらねばならない。これからの彼に必要になってくるのは、心を落ち着かせる安定だからな」
「確かに。だが、あの少年が必要になるかどうかは、これから行われる元老院との正式会談の決定しだいだ。結果が出るまで、あの子の話をするのはやめておこう」
「……そうだな。我々の努力次第で、大和君が普通の魔法学校の一学生として、当分の間は平和に暮らせるかもしれないのだからな」
「だが、場合によっては……分かってるな?」
ティナが何かを探るような目付きで、アーカートの瞳をジッと見つめた。場合によっては、この後すぐに行われる会談の決定次第では、伝説の王の証を持つ大和の存在を徹底的に利用することも躊躇しないな、という意味が、その視線には込められていた。
「………私も随分とずるい大人になったものだな」
アーカートはそう呟くと、視線を窓の外に向けた。空は晴れ渡っており、辺りには暖かい陽光が燦々と降り注いでいる。
運命の時間は刻一刻と迫っていた。



そんな澄みきった空を、ただジッと眺めている眼差しがもう1つあった。
そこはフリッドリッチ城の一室。歴史ある古書から名高い詩人の詩文、サンクキングダム国内の細かい地形やその土地の人口などが記された地図など、様々な書物が保管されている書庫に、あの伝説の王の証を持つ少年、橘 大和はいた。

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