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気弱な少年とセクシーな仲間達〜第2章〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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気弱な少年とセクシーな仲間達〜第2章〜 217

そしてその事に気が付いている者は誰もいない。大和の過去を知る魔法剣ガルドでさえ少し気の毒に思うくらいで、彼の心の傷口までは気が付いてはいなかった。
孤独、失望、憤怒。大和の心中は負の感情で埋め尽くされていた。まるで昔の自分のように。
だが1人、ヴェインに対する感情だけは違っていた。
仲間達に問い詰められ酷い孤独感に苛まれた大和を、彼は助けてくれた。奈落の底でもがき苦しむ気分だった少年に、手を差し伸べてくれたのだ。
根なし草のような心細さを感じていた時に、この安定感は大きかった。大和本人は気付いていなかったのだが、彼の心の中のヴェインの存在は、自分でも考えられないくらい大きなものになっていたのだ。
だからだろうか。大和は極めて重要なことに気が付いていなかった。
大和が知り尽くしていたサンクキングダムの近代兵器鉄砲。実はこの武器、まだ開発されてから半年ぐらいしか経過しておらず、おまけに軍の機密情報として扱われていたため、国内でも知っている者は数少なかった。
ましてや、サンクキングダムに一度も来たこともない大和がこの鉄砲の情報を知ることは、不可能に等しかったのだ。
たかが魔法学校の一生徒が、なぜ軍の機密情報を知っていたのか。その理由を一番知りたいのは、他ならぬ軍のトップに立つ独眼竜ヴェインなのである。
だが、彼は問い質す事もなく大和を見逃した。なぜか?
中庭から立ち去っていく大和の後ろ姿を、ヴェインの隻眼がジッと見据えていた。その眼光には、先程大和をかばった時の温かさは、微塵も感じられなかった。



部屋に戻ったティナはアーカートを問い詰めていた。
「一体どういうつもりだ!?あんな挑発までして」
ティナは拳をテーブルに叩きつけながらアーカートを睨み付けた。対するアーカートは頬杖をつきながら、ジッと目を閉じている。
ティナの怒りはもっともだった。この日、アーカートとティナの2人は、サンクキングダムの最高機関、元老院との会議が予定されていたのである。メンバーは12人。先程アーカートと険悪な雰囲気になった独眼竜ヴェインも、そのうちの1人だ。
ティナは思い付く限りの悪態をつきながら、アーカートの表情を観察していた。
何だか様子がおかしい。いつものアーカートならここらで言い返してくるところなのだが、今は口を閉ざしたまま一言も話そうとしてこない。その表情は考え事をしているようにも見えるし、酷く落ち込んでいるようにも見える。
彼も彼なりに責任を感じているのだろうか。
自分達がここに来た理由を決して忘れた訳ではなかった。彼らの目的は、故郷を魔王軍に占領されメリツ修道院に避難中のルカジマと大国サンクキングダムの同盟を締結させることである。

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