気弱な少年とセクシーな仲間達〜第2章〜 158
「第二軍かかれぇ!!同時に第三軍進軍準備開始!!」
第二軍に配置された町民が右曲輪に攻め上がった。同時にまたもや曲輪内から矢が放たれる。
この繰り返しだった。
約200人の町民を5軍に分け、大声で攻めこみ、反撃されたら即座に退く。そしてまた攻める。
(………他の連中は大丈夫だろうか?)
軍の指揮をとりながら、ティナは左曲輪を見上げていた。
ジェン達が潜んでだいぶ時間がたった。
「ねぇ、カスミ。まだ?」
「まだだ。左曲輪の賊共が右曲輪に移動したら攻撃する。今攻撃しても意味がない」
「………待ち遠しいなぁ」
ここは左曲輪から近い森の中である。いるのは、ジェン、カスミ、セリス、シホ、ナタリーの5人。
彼女達は姿を隠しながら待っていた。右曲輪の方からは戦場特有の大声や罵声が響いてくる。
「ねぇ、本当に大丈夫かな。敵さん全然動かないよ。王様の作戦失敗したんじゃない?」
「まだ分かりませんよ。とにかく待ちましょう」
「そうだな。それよりナタリー。本当に私達と一緒でよかったのか?バランに残っていてもよかったのだぞ」
カスミが、杖を抱き抱えながら震えているナタリーに小声で言った。
「だ、大丈夫です。怖くありませんから。それに、私だけ安全な場所にいるわけにはいきませんから」
「気にする事はない。それに、お前は実戦経験がほとんどないじゃないか」
「でも、私達の中で一番年下の大和君は、今最も危険な場所にいるじゃないですか。なのに私だけ……」
「それはそうだが……」
と、その時だった。左曲輪の中で大きな動きがあった。
「大変だぞ。敵は右曲輪を集中攻撃するつもりだ。このままじゃヤバい。俺たちも行くぞ!」
左曲輪を守る賊の1人が怒鳴っていた。
「ちょっと待てよ。勝手に持ち場を離れていいのか?命令違反だぞ」
「何言ってやがる!女王様は俺達の好きにやれ、って言ってたらしいじゃねぇか!それに敵は右曲輪しか狙ってきてないし、攻めてくる場所の守りを固くするのは当たり前だろうが!!」
と、制止する仲間の言うことも聞かず、左曲輪を守る賊の半数以上が右曲輪に移動してしまった。
その頃、サドクインは砦の全体が見渡せる場所で顎が外れるほど驚愕していた。
「左曲輪は?左曲輪を守る連中はどこに行ったの!?」
サドクインは近くにいた賊を捕まえて詰問した。賊は、むしろサドクインの様子に驚いていた。
「み、右曲輪に敵が集中攻撃したために……その右曲輪へ……」
「何やってんのよ、馬鹿!!」
確かに右曲輪には敵が集中している。しかし、攻め上がったかと思うと、すぐに逃げてしまう。
これは明らかに右曲輪に賊を引き付けるための罠である。事実、左曲輪を守る部隊の大半が右曲輪に移動してしまった。
「なんてこと……」
サドクインは呆然と立ち尽くした。ジュリアを調教した満足感など、もうすっかり消え失せている。