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月光に照らされし幻影
官能リレー小説 - ファンタジー系

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月光に照らされし幻影 20

この南の森は満月の日となれば幾十幾百の狂暴妖魔が闊歩し、それを狩りに来る上位のハンター達の激戦地になると悪名高い森だ。
しかし、この大きな獣道を奥へ奥へと進んでも他のハンターも襲いかかって来る妖魔も居なかった。
「満月の夜以外は出ないと聞いた事がござったが…一匹たりとも見つからぬとは意外でござるな。もう諦めて解散というのはどうでござる?」
最初に愚痴を言うのはアリアと思っていたガイルと
最初に愚痴を言うのはガイルと思っていたアリアが
意外な人物からの諦め発言に驚く。
「え゛〜っもう、帰るのかっ?!新種の妖魔探しはどうするんだよっ!
たとえ妖魔が出ないとしても、今日はこの森を色々と下見して狩りの日に備えようかと思ってたのにっ」
イザヨイの提案に、アリアは露骨に不満げに声をあげた。
「ココ狩場にするつもりだったのかよっ…なんて命知らずなっ」
ガイルはそんなアリアに飽きれ顔で頭を掻きつつ毒づくと、真面目な顔になりイザヨイに向き直った。
「てっきり最初にリタイアすんのはアリアかと思ってたんだが意外だな…具合でも悪くなったか?イザヨイ?」
心配そうに、イザヨイの顔を覗き込む。
「実は肝の臓が少し……」
そう言って腹部を押さえるイザヨイに、アリアとガイルはお互い顔を見合わせ考え込んだ。
確かに体調が悪い者を連れていっても足手まといだ。
「そうか、なら帰ろ……」
「アリア殿! 後ろ!」
帰ろか、と言おうとした瞬間。
アリアの背後の茂みがガサリと音を立て、アメーバのような妖魔が二体アリアに飛びかかってきた。
不意を突かれ、素早く剣に手をかける。 だが、突然妖魔は真っ二つに切断されてしまった。
「……えっ?」
アリアは自分の傍らで刀の柄に手をかけているイザヨイが居ることに気が付いた。
どうやらイザヨイが助けてくれたようだ。 相変わらず目にもとまらない剣技。
なのだがアリアの口からは感謝の言葉は出てこない。
「……具合、悪いんじゃ?」
疑問が浮かび、そういうとイザヨイはわざとらしいくらいに腹を押さえて、アイタタとか言い出した。
「イザヨイ、何が嫌なの?」
これは何か理由があると感付いたアリアはイザヨイを問いつめようとする。
それに便乗するガイルと二人でイザヨイを見つめる。
「……さて、進もう……でござる。」
逃げた。
一人サッサと奥に進むイザヨイの後ろ姿にアリアとガイルは確信していた。
アリアは仕方無く逃げるイザヨイを追いかけようとした時、先程アメーバ妖魔が飛び出して来た茂みの隙間から人の姿が見えた。
しかし、その容姿の有り得なさにアリアは思わず自分の目頭を抑える。
なんか、アム君程じゃないけど小さい男の子が居た?いやいや、あんな所に居たら私より先にアメーバ型の妖魔に襲われるよな。ハンターになるには幼いし、ひょっとして幽…自分が見た気がする男の子についてあれこれと一瞬だが考えてしまう。
アリアは現実を見据えるためにもう一度だけ同じ所を見た時には、そこには誰の姿形も無かった。

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