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学校で死のう!
官能リレー小説 - ファンタジー系

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学校で死のう! 60

ガチャガチャ……カチャ……
文芸部の部室に入ったときと同じように、ピッキングで鍵を開けて入室する。中に入った哀徒は周囲を見渡し、まずレコーダーを探し出した。
――あったあった。ちゃんと動くかな?
哀徒はレコーダーのスイッチを入れ、電池がまだあることを確認した。そして新品のカセットテープを見つけ出してセットし、音を吹き込む準備をする。
――最初はドアをノックする音と、ミルキュリアに呼びかける声だ。それをドアの向こうから聞かせれば、あいつらは俺がドアの外にいると思い込む。
ドアの近くに移動した哀徒は、レコーダーのカウンターを見ながら、必要な分だけ早送りした。続いて録音ボタンを押し、ノックするようにドアを叩く。
ドンドン!
さらに哀徒は、レコーダーに向かって大声で叫んだ。
「来たぞ! ミルキュリア!」
――まずは、これでいいな。
哀徒は一旦、停止ボタンを押した。
――ここからが肝心だな。
次に吹き込むのは、哀徒が何者かに襲われたような音声である。万が一にも、棒読みに聞こえてはならない。哀徒は呼吸を整え、演技力の発揮に遺憾がないようにした。そして再度、録音ボタンを押す。
――行くぞ!
「な、何だお前……? うわああああっ!」
叫び終えた哀徒は停止ボタンを押し、一息ついた。
――まあ、こんなもんか……
今の声を聞いたミルキュリア達は、何が起こったのか確かめようと、部屋の外に飛び出して来るだろう。そこを不意打ちするというのが、哀徒の立てた計略だった。
もちろん、成功の保証などはない。彼女達はテープレコーダーを使った経験はあるまいが、果たして本当に、テープの声を哀徒の肉声と錯覚してくれるだろうか。
また、錯覚してくれたとして、うまく部屋の外まで出てきてくれるだろうか。
そして、ここが一番重要だが、奇襲を仕掛けたとして、本当に彼女達を葬れるだろうか。1人でも生き残られたら、次に死ぬのは自分と先生だ。
――俺が死ぬのはもう覚悟の上だが、先生はなんとかして助けたいな。でも、今はこれ以外に手の打ちようがない……
とにかく、なるべく確実性の高い攻撃で3人を倒す。哀徒はそれだけを考えることにした。もししくじったら……そのことは、今は考えないようにしよう。
哀徒は椅子に腰掛け、録音を終えたテープを巻き戻した。
――?
そのとき、彼は不意に、入口から風が入ったような気がした。見ると、確かに閉めたはずのドアがわずかに開いている。
「ん……閉まってなかったか?」
何分安普請の建物なので、勝手に開いたのかも知れない。哀徒はあまり深く考えず、準備に戻った。あまり時間がないのだ。
ガチャ、ガチャ……
再生ボタンを押し、ちゃんと動くか確認する。故障がないのを確かめると、哀徒は慌ただしく立ち上がり、軽音楽部の部室を出て本校舎棟へと向かった。

――――

またしても時間は少し遡り、哀徒が部室で戦闘の準備をしていた頃。

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