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学校で死のう!
官能リレー小説 - ファンタジー系

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学校で死のう! 56

哀徒は本を捧げ持ち、心の中で念じる。
――ありがとう。お前が俺をここに導いてくれたんだな。最後まで読んであげられなくて済まないが、俺の代わりにみんなに読んでもらってくれ。
本を本棚に入れた哀徒は、戸棚から寄贈リストを取り出した。本を部に寄贈する旨を記載し、元の場所に戻しておく。
――これでいい……後は目一杯戦うだけだ!
鞄を肩にかけた哀徒は、テーピング用のテープやポケットティッシュなど、役に立ちそうな物をかたっぱしから入れていった。さらに灯油入りのペットボトルを中に放り込む。
――ええと、これはと……
マッチを鞄に入れようとした哀徒は、ふと思い止まった。もしミルキュリアに水をかけられ、鞄に浸水したら濡れてしまうかも知れない。そうなったら使い物にならなくなるだろう。
――何か水を防ぐものは……おっ、あれがいい。
電気ポットのある戸棚に、小さなビニール袋が見えた。哀徒は近づいて袋を手に取り、中の割り箸やらプラスチックのスプーンやらを取り出すと、代わりにマッチを入れてくるむ。大した防水になるとは思えないが、裸よりはマシだろう。
――さて、これはどうするかな……?
マッチを鞄に入れた哀徒が次に考えたのは、ぺティナイフのことだった。できればいざというとき、すぐに使えるようにしたい。
――これだ。
哀徒は本棚の隅に突っ込まれていた新聞紙を取り出した。ナイフの刃に紙をぐるぐると幾重にも巻きつけ、即席の鞘にする。巻きつけ終わったらテーピング用のテープで周りを固め、ばらけないようにした。
――よし。完成。
鞘の付いたナイフを帯の左腰に差した哀徒は、抜け落ちないようテープで固定した。ついでなので、槍の穂先にも新聞紙を巻いておく。
「よいしょっと……」
金属に何かの光が反射して、こちらの位置が暴露したりしないための処置だった。もっとも、真っ白い柔道着を着ている以上哀徒が闇にまぎれるのはそもそも難しく、気休めの意味が大半なのだが。
それはさておき、これで身支度は完成である。
――いよいよだ。さて、どうやってあいつらを振り回してやるかな……
作戦を練り始める哀徒。だがそのとき、急に女性の声が頭の中に響いてきた。
『哀徒。聞こえているだろう。私だ。ミルキュリアだ』
「ミルキュリア!」
哀徒は驚愕のあまり、体をビクンと痙攣させた。慌てて机の上の槍を1本手に取り、相手の姿を求めて周囲を見回すが、影も形も見当たらない。
「ど、どこだ? どこに……?」
『残念ながら、私はお前の近くにいない。魔法を使って、お前の心に話しかけている』
「何だって……?」
哀徒の全身から、ダラダラと汗が流れ出していた。ミルキュリアが近くにいないと分かったのはいいが、それでは一体彼女は自分に何を話すつもりなのか。かなり嫌な予感がする。
「……降伏勧告なら、するだけ無駄だよ?」

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