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学校で死のう!
官能リレー小説 - ファンタジー系

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学校で死のう! 55

中から、500ミリリットル入りのペットボトルを取り出す。ラベルには“ムロシゲ”とマジックで書かれていた。彼が部室に持ち込み、飲みかけで冷蔵庫に入れておいたものだ。
キュッ……ゴク……
蓋を開け、中身のお茶を飲む。少し微温くなっていた。おそらく自分がミルキュリアに出くわした時ぐらいに、誰かが電気を止めたのだろうと哀徒は推測する。
――もしそうだったら、止めたのはグーランスって人かも知れないな。あのヘティラは、そんなことしそうに見えないし……
ゴク、ゴク……
――まあいいや。今は止めたのが誰でも!
お茶を飲み干した哀徒は、憶測を止め、さらに室内を物色しにかかった。今までに手に入れた武器では、おそらくヘティラに通用しない。何かいいものはないだろうか。
――ん? そうだ、これがあった!
哀徒の目に留まったのは、部屋の片隅に置かれている石油ストーブだった。今はまだ本格的に活躍する季節ではないが、急に気温が下がった時に備え、燃料を入れた状態で置いていたのである。
――ちょっと失礼。
哀徒はストーブに一言断ってから、燃料タンクを取り外した。そして燃料タンクの蓋を開け、中身の灯油を今し方空にしたペットボトルに移し替えていく。移し替えは意外と難しく、うまくやらないともろに零れそうなので、ちょっとした大道芸人気分だ。
「センキュー」
首尾よく移し替えを終えた哀徒は、居もしない観客に一礼した。ペットボトルの蓋を閉め、燃料タンクをストーブに戻す。さらに再び戸棚に向かい、中からマッチを取り出した。ストーブの着火装置が壊れたときのために、用意しておいたものである。
――いくらあのヘティラでも、灯油をかけられて放火されたら、タダでは済まないはずだ!
そう哀徒は思う。まあ何分相手は未知の技術を持つ魔法使いなので、あまり期待し過ぎるのは禁物だが。
ともあれ、哀徒は入手した武器一式を机の上に並べ、再度確認した。
――槍2筋にナイフ1丁、それに500ミリリットルの灯油にマッチ。こんなところか、ここで手に入るのは……
ちょっと物足りない気がしないでもなかったが、仕方ないと哀徒は思った。ここは武器庫でもなんでもなく、ただの文芸部室に過ぎないのだ。
――武器はこれでいいとして、後は鞄の中身だな。少し整理しておかないと。
哀徒は鞄を開き、まず日の丸神風の鉢巻を取り出し、頭に巻いた。
――虚仮脅しぐらいには、なるだろう。
そして……例の本を取り出す。
「…………」
――こいつを取りにこなかったら、俺は今ここにいなかった。
本のカバーを見つめ、少し感慨にふけった。ここに来たせいでミルキュリア達と死闘を演じる羽目になったわけだが、後悔する気持ちは全くない。それどころか、学校を守って戦う機会を与えられた幸運に感謝したいくらいだった。

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