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学校で死のう!
官能リレー小説 - ファンタジー系

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学校で死のう! 52

念のため、哀徒は扉の前で立ち止まり、中に人の気配がないかどうか窺った。先程文芸部員であることをミルキュリアにうっかりしゃべったため、もしかしたら待ち伏せされているかもしれないと考えたのである。
――大丈夫みたいだな。
幸い、哀徒の心配は杞憂に終わった。部室に人の気配らしいものは感じ取れなかったのである。だが――
「し、しまった……」
中に入ることができなかった。彼は自分が、ドアを開けるための鍵を持っていないことに気付いたのである。
――俺としたことが、とんだ失敗をやっちまった……
部室の鍵は、ズボンのポケットに入れていた。そのため、ヘティラに着衣を引き裂かれたときに、服の切れっ端と共にその場に残してきてしまったのである。手早く拾ってくればよかったのだが、生憎とそこまでは気が回らなかった。
――室重哀徒。本日、未熟者でございました……
とは言え、まだ悲観するのには早かった。哀徒は頭に手をやり、長い髪を整えるヘアピンのうち、2本を引き抜く。
スッ……スッ……
――うまく行きますように!
2本のヘアピンを変形させ、相次いで鍵穴に突っ込む。言わずと知れたピッキング行為だ。
カチャ……カチャ……
気分はまるで窃盗犯。いや、事情を知らない他人が今の自分を見たら、間違いなくそう思うだろう。だがそんなことを気にしている場合ではない。指先に全神経を集中し、哀徒はヘアピンを操作した。
カチャ……カチャ……ガチャン!
――やった!
苦闘すること数分、哀徒は部室のドアの開錠に成功した。旧式の錠だったのでうまく行ったが、最新式のものだったらまず歯が立たなかっただろう。学校の貧乏性に、再び感謝だ。
「こんばんは〜」
ドアノブを捻り、哀徒は部室の中へと足を踏み入れた。いつもの癖で、つい挨拶までしてしまう。そしてドアの脇にある電灯のスイッチに手を伸ばし、照明を点けようとしたが……
――おっと。いけないいけない。
慌てて手を引っ込めた。窓から漏れた光をミルキュリア達に見られたら、それこそ馬鹿丸出しだ。やりづらいが、カーテン越しに届く月明りだけで行動するしかない。
――まずは、手を拭くか。
文芸部の部室は、中央にいくつか机が集められ、壁際に本棚やロッカー、冷蔵庫等が配置されるというレイアウトになっていた。
哀徒はまず机の上に目をやり、置いてあるウェットティッシュに手を伸ばす。
――やれやれ。やっときれいになった……
両手に付いた自分の小便を拭い、哀徒は一息ついた。続いて自分のロッカーを開け、中身をチェックする。
――まずは着るものだな。裸に靴だけじゃどうしようもない!
一応着られるものが見つかった。柔道着だ。よく柔道部から助っ人として呼ばれるため、そこに置いていたのである。背中部分にはゼッケンが縫い付けられており、“襄海高校”、その下に“室重”と大きく文字が書かれていた。

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