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学校で死のう!
官能リレー小説 - ファンタジー系

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学校で死のう! 44

「出て来い! 出て来いって!」
もちろん少し離れた所には、建物や立ち木があった。だがいかに哀徒が俊足でも、たった2、3秒でそこまで走れるはずはない。まだ近くにいるはずだと信じ、ヘティラは自慢の夜間視力で必死に捜索した。まさか味方が張った結界に潜んでいるとは、夢にも思わない。
「一体どこだよ……出て来てくれよ……」
その後ヘティラは十分以上に渡って付近を探し回り、哀徒の姿を求めた。だが当然、見つかるはずもない。彼女は半泣き状態になりながら、その場を立ち去った。
「うう……ぐすん」
うつむきながら歩くヘティラの額に、何かがゴツンとぶつかる。顔を上げると、それは彼女の胴体程の太さがある木であった。
「ぐっ!」
怒りの余りか悲しみのせいか、ヘティラはその木を抱えると力任せに引っこ抜いた。
「くそおっ! やっと見つけた番なのに……」
引き抜いた木を無造作に放り捨てる。一本だけでは収まらなかった。ヘティラは近くにある木を、数本立て続けに薙ぎ倒す。彼女がようやく動きを止めたとき、その場はあたかも台風が過ぎ去った後のような状態になっていた。

ここで時間は少し巻き戻り、ヘティラが必死に哀徒を探し回っていた頃。爆笑を必死にこらえながらその光景を眺める女性がいた。もちろんグーランスである。
「うぷっ、ぷっ、うぷぷぷっ……」
彼女は哀徒がヘティラを欺いて身を隠す、その一部始終をしっかりと目撃していた。だが何としたことか、哀徒の隠れ場所をヘティラに知らせることなく、高みの見物を決め込んでいたのである。
「ぷぷっ。傑作ですわ、あの山猫の表情……ぶっ、そんな小石の下に哀徒様がおられるはずないでしょう。わたくしを笑わせ殺す気ですの? ぶぷっ」
通用門に駆け込む哀徒を見たとき、グーランスは彼が外に逃げようとしていると考えた。もしそうだったら、すぐこちら側に飛び出してしまい、ヘティラと鉢合わせになるはずだ。
ところが案に相違し、ヘティラが捜索を断念するまで、哀徒はついに姿を現さなかった。そこで初めて、グーランスは彼が結界の中に身を隠していると気付いたのである。泣きながら立ち去るヘティラの後ろ姿を見送りつつ、彼女はつぶやいた。
「室重哀徒様……わたくしの張った結界を利用するなんて、なかなかセンスのあるお方ですわね。それにあの美しい肉体……」
しばしの間、グーランスは哀徒の姿を思い出して頬を緩める。だが次の瞬間、彼女は突然表情を強張らせ、手にした槍を取り落とした。
「はっ! もしかして、あの方こそわたくしが長年捜し求めていたご主人様……間違いありませんわ。まさかこんな所でお会いできるなんて……ええい、こんなことをしている場合ではありませんわ。早くわたくしの手で捕獲して差し上げないと!」
グーランスは急いで槍を拾い上げた。
「うふふ。わたくしはあの高慢ちきや脳味噌筋肉とは違いますわよ、哀徒様。一度捕えたら絶対に逃がしませんわ。お覚悟……」

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