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学校で死のう!
官能リレー小説 - ファンタジー系

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学校で死のう! 43

――助かったら、最初に手を洗わないとな……
鞄を後ろに回したのも、この行為がヘティラに露見しにくくするためである。やがて小水が止まった。いよいよ作戦の山場だ。
――よし、行くぞ……
動悸が高まってきた。呼吸を整えることでそれを強引に押さえつけ、哀徒はかん高い声を上げる。
「うわっ! 何これ!?」
「どうした?」
哀徒の悲鳴を聞き、ヘティラが声をかけてきた。哀徒は顔だけで振り向きつつ、わざと泣きそうな口調でそれに答える。
「お、おち○ちんが……」
「何!?」
ヘティラは血相を変えて近寄ってきた。哀徒が想像していた以上の勢いである。彼女は哀徒の左側から彼に近づき、股間を覗き込もうとした。
「見せろ!」
――今だ!
哀徒は目を閉じて顔を右に背けると、右手に貯めた小水をヘティラの顔めがけて投げ付けた。
ピシャッ!
「うわっ!?」
ヘティラは悲鳴を上げて両手で顔を覆い、その場にかがみこんだ。どうやら目に入ったようだ。さすがの彼女も、これではたまらないだろう。哀徒はその隙を突き、なるべく足音を立てないように走り出した。
――さあ、うまく行ってくれよ!
無論ヘティラの事だ。ものの数秒もすれば視界を回復させて哀徒を探し、追いかけようとするに違いない。だが哀徒にとっては、その数秒で十分だった。彼は半開きの通用門に駆け寄り、するりとその扉を潜ったのである。
――それっ!
当然、外には出られない。先刻と同様、周囲の景色は消えて完全な暗黒の世界が広がる。だが哀徒はそれを承知の上で、あえてこの門を通っていた。何も見えなくなった所で動くのを止め、じっと息を殺して時間が過ぎるのを待つ。
――俺の考えが正しければ、今俺の姿は向こうから見えなくなっているはずだ……
相手の魔法を逆用し、身を隠そうという苦肉の策だった。門扉越しに石を投げたとき、一瞬消えてからこちらに戻って来たのを思い出し、考え付いたのである。だが果たしてヘティラを誤魔化し切れるだろうか。もし失敗したら、この場で死ぬ覚悟をしなければならないだろう。
『くそっ! どこだ哀徒!?』
ヘティラの叫び声が、哀徒の耳に届く。だがその聞こえて来る方向ははっきりしなかった。強いて例えるなら周り中にスピーカーがあり、外の音を伝えているような感じだ。やはりこの暗闇の中では、外界の方向は関係なくなるらしい。
『どこ行きやがった!? 出て来い哀徒!』
それはさておき、聞こえてくる声からすると、ヘティラはまだ哀徒の居場所を察知していないようである。かすかな安堵を覚える哀徒だったが、今もって全く油断できないのは言うまでもない。全ての神経を耳に集中して外部の様子を探りながら、彼はひたすらに時の流れるのを待ち続けた。

一方その頃、ヘティラは完全に哀徒を見失っていた。いきなり小水を浴びせられ、わずかな時間視力を失った隙に姿を消されてしまったのだ。慌てて周囲を見回すも、近くに隠れられそうな場所はない。

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