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学校で死のう!
官能リレー小説 - ファンタジー系

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学校で死のう! 42

必死で考える哀徒の目に、ふとあるものが飛び込んできた。それは先刻哀徒が通ろうとして果たせなかった、あの通用門である。よほど気が動転していたのだろう。扉が半開きのままになっている。
――あれだ! 何とか逃げられるかもしれない!
哀徒の脳天に、突如として逃走のためのアイディアが浮かんだ。構想1秒検討0秒、純度100パーセントの行き当たりばったりだったが、この期に及んで贅沢は言っていられない。思い付いたら即実行するしかなかった。哀徒ははやる心を押さえ、通用門が近づくのをひたすら待つ。
だがこのとき、哀徒もヘティラも知らなかったが、彼らの背後、やや距離を開けた所に一つの人影が現れていた。女性と思しきその人影は長衣をまとい、髪は黒のロングストレートである。さらにその手には短い三叉の槍がかざされていた。グーランスだ。彼女の方は、哀徒とヘティラに気づいているようだった。
「あれはヘティラと……室重哀徒様? ということはヘティラが哀徒様を捕まえたんですのね。くっ、忌々しいですわ。このわたくしがあの山猫に後れを取るなんて……」
彼女は悪鬼のような形相で、ヘティラの後ろ姿を睨みつけた。
だがそうしていても埒が開かないと悟ったのか、グーランスはやがて表情を戻し、ヘティラに声をかけようとする。
「…………」
しかし彼女の唇が、開くことはなかった。ヘティラに首を抱えられている哀徒が突然、「あ、あのっ!」と妙な声を上げたからである。グーランスはヘティラに話しかけるのを中止し、そっと物陰に身を寄せて成り行きを見守り始めた。

――行くか……
通用門との距離が10メートル程になったとき、ついに哀徒は逃亡作戦を開始した。まずはヘティラに話しかけ、歩みを止めてもらわないといけない。
「あ、あのっ!」
「ん? 何だよ?」
哀徒の思惑通り、へティラは足を止めた。さらに哀徒は、用意していた台詞を吐く。
「お、おしっこしたいんですけど、そこでしてもいいですか? 漏れちゃいそうで……」
壁を指差し、いかにも恥ずかしそうに尋ねた。それを聞いたヘティラは、渋々といった様子で答える。
「しょうがねえなあ。早く済ませろよ」
さすがの彼女も、生理現象では致し方ないと思ったらしい。「逃げようとしたらどうなるか分かってるな?」と釘を刺しつつ、名残惜しそうに哀徒の首を放した。
「は、はい。すみません……」
へティラの拘束から解放された哀徒は、そそくさと壁の近くに移動した。さりげなく鞄を後ろに回すと、壁に向かって立ちションを始める。これで出なかったら一発で作戦頓挫だが、幸い普通に出すことができた。
――美化委員の人、申し訳ない。生きてたら後で掃除するから……
放尿が終わりに近づく頃、哀徒は傍目には奇妙に思える行動を取った。右の手のひらに、小水を受けて貯め始めたのである。と言ってももちろん、これは作戦の一部である。ヘティラから逃れるため、あえて衛生観念を銀河の彼方に投棄しているのだ。

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