PiPi's World 投稿小説

学校で死のう!
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 3
 5
の最後へ

学校で死のう! 5

「はあっ!」
右手で剣の柄頭を押さえて抜剣を阻止すると、空いている左手で女性の顔にフックを放つ。
「くっ!」
女性は体をのけぞらせてかわした。だが体を反らせるため左足に体重が掛かる。その隙を見逃さず、哀徒は右の回し蹴りを相手の左の太腿に放った。
「でやあっ!」
体重の乗った足を上げてガードすることはできない。女性は哀徒の蹴りをもろに食らった。
バシイッ!
「ぐっ!」
女性が苦悶の声を漏らして体勢を崩す。スカートの下に防具を着けられていたら威力半減だろうが、幸いその感触はなかった。
「もらった!」
右足をやや前方に下ろした哀徒は、止めの左ストレートで女性の顎を撃ち抜こうとした。だがその瞬間、女性が哀徒に右手を向けて何事かを口走る。
「○×△!!」
「え!?」
その異様な行動に面食らった哀徒の動きが一瞬止まる。次の瞬間女性の手から水流が噴出し、哀徒に襲い掛かった。
「何!?」
水圧をまともに食らって哀徒は吹き飛ばされた。
「うぐうっ!」
何メートルか宙を飛んで床に叩き付けられる。受身は取ったが呼吸が苦しい。ようやくのことで立ち上がった。
「はあ、はあ…」
相手との距離をじりじりと詰めながら、哀徒は呼吸を整える。
予想しなかった攻撃ではあったが、彼はすぐに落ち着きを取り戻した。この程度のことでいつまでもパニクっていては、全日本輪投げ選手権王者の名が泣くというものだ。
――騙されたな。あんなネタ仕込んでたなんて!
女性はおそらく背中に水を入れたタンクを背負っているのだろうと哀徒は考えた。そこから手首まで伸びた管を通じて噴射したに違いない。ポンプの作動音らしいものが聞こえなかったところを見ると、高圧の空気を使ったのだろうか。

――どっちにしろこれだけぶちまけたんだ。もう水芸女(便宜的に甲冑の女性をそう呼ぶことにした)のタンクに水は残ってないだろう!
床を流れる水の量を見て哀徒は思った。噴射するのが高圧の空気だけならポンプでも使って再充填できるが水ではそうは行かない。もうこれ以上は撃てないはずだ。
今度はどうやって抜剣を阻止するか考えながら、哀徒は相手の出方を再度窺う。
ところが水芸女の方はと言うと、彼女は水流を発射したままの姿勢で固まったままだった。
自分の右手の甲を見つめて驚愕したような表情を浮かべている。のみならず彼女は
「馬鹿な…こんな偶然が…だがこれで…」
等と意味不明なことをつぶやいていた。
――何驚いてるんだろう。爪でも割れたのかな?
訝る哀徒だったが、不意にそれどころではないある重大なことを思い出した。
「しまった!濡らしちゃったかな?」
それはもちろん、服の下にしまった例の本のことである。哀徒は慌てて濡れたワイシャツの前を開けると本を取り出し、月明かりで照らした。
「よかった。大丈夫だ…」
奇跡的に本は無事だった。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す