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学校で死のう!
官能リレー小説 - ファンタジー系

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学校で死のう! 29

ただ、戦う為には先生を床に下ろさないといけない。だが不用意に下ろしにかかれば、何かしようとしているのが相手に分かってしまうだろう。少しでも勝率を上げる為には、ギリギリまで戦意を見せないのが望ましかった。
――それじゃどうするか……そうだ!
不意に哀徒は立ち止まって左手をわずかに上げ、蚊の鳴くような声で大女に頼み込んだ。
「ま、待って……」
「ん? 何だよ?」
大女はあっさり足を止めた。案外乗せられ易い性格なのかも知れない。
哀徒は「あ、あの……」と声を掛けながら体を揺すり、先生を抱え直そうとする。だがその途端にバランスを崩して足をもつれさせ、うつぶせに転んでしまった。
「あひゃっ!」
同時に担いでいた先生の体が床に降ろされる。哀徒は先生から手を離し、無様に床の上をのたうち回った。
「おいおい。大丈夫かよ?」
その様子を見た大女は、小馬鹿にするような声を出した。声をかけられた哀徒は「ひいっ!」と悲鳴を上げる。そのまま彼は立ち上がらず、床にへたり込んだ姿勢のまま動かなくなってしまった。
「ああ……」
もちろん一連の動作は哀徒の芝居である。相手に警戒させずに先生を下ろし、かつ先生が床に頭を打たないようにするにはこうでもするしかなかった。即席で考えただけにうまく行くかは微妙だったが、どうやら引っ掛かってくれたらしい。おそらく大女の目には、哀徒が腰を抜かしたように見えているに違いない。
問題はここからだ。
相手は今、哀徒がすぐには立てないと思っているだろう。その錯覚を利用して奇襲する訳だが、その前にもう一段駄目押しの隙を作りたいと哀徒は考えた。彼は床に座り込んだまま、適当に言葉を発してみる。
「あ、あの……だ、大丈夫です。え、ええと……あなたもミルキュリアと同じ魔法使いなの?」
「ああ。魔法なら使えるよ。あのミルキュリアと一緒にされるのは気に食わねえけどな」
――よし、行ける!
大女の返答を聞いた哀徒は、ついに勝負に出た。大女の斜め後ろ、何もない空間に向かって話しかける。
「だってさ。ミルキュリア」
「えっ?」
大女が怪訝な表情で後ろに振り向いた。その瞬間に哀徒は行動を起こす。
――今だ! 行くぞ!
右手と左足を突っ張って体を浮かせ、右足を左後方に引く事で一瞬にして立ち上がった。そのまま彼は声を出さずに、大女めがけて突進を開始する。
「何だよ。誰もいないじゃ……うおっ!」
元の方向に向き直った大女は、自分めがけて真っ直ぐ走ってくる哀徒を見て驚愕した。完全に虚を突かれた格好である。彼女は慌てて両腕を構え、顔や胴体を攻撃されないようガードした。もはや一発で彼女をノックアウトすることは不可能だ。

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