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鬱屈した何か
官能リレー小説 - ファンタジー系

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鬱屈した何か 3

彼は、人間の精力を吸い自分のものにすることなど望んでいなかったのだ。
「なんで俺は」
男は自分の衝動を疑問に思った。男の力は淫欲と快楽を貪る者と呼ぶに相応しいものであり、それを満足させるためならどんな行為も厭わないはずだったのに。
彼は自らの生き方の矛盾に気づいていた。だからこそ、精を喰らい自らの魔力に変えていくことで快楽は得られても、それを上回る虚無感が男を襲ったのだ。
「どうして俺はこんなことを」
彼は、自らの行為を悔いて呟く。あの淫猥な宴の最中に感じた虚しさを、彼は覚えている。
だが、もはや逃げ出すことは出来なかった。仮面を付けた男盗賊達が、淫猥な宴の跡を踏みしめながら現れ彼を取り囲んだのだ。
盗賊たちは漆黒の男の魔力に当てられて変質し眷族とも呼べる存在に成りはてていた。だが男の心の乱れによって制御が外れ、半ば暴走したように沸き上がる衝動のままに主たる男を貪ろうと集まってきた。
「それでも俺は」
世界に見捨てられた男の内に生じたのは、反抗する眷族への強い苛立ちであった。男が無造作に腕を振ると、盗賊たちの肉体がなにかに掴まれたように固まる。棒立ちの男たちの中で陰茎だけが黒々とそびえ立ち、異常な男の指の動きに合わせて漆黒の光が輝き出した。
「俺は、世界から切り離されし者」
男の体の周りに黒い霧が溢れ出し、その体を包み込んでいく。
ドクドクと鼓動のように蠢く霧の中で、赤い光が二つ怪しく輝いた。
その黒い霧の渦に盗賊たちが引き寄せられていく。
男たちは身動きの取れないままに霧の中へと引きずり込まれ、女たちは地面に白濁の跡を残しながら力の抜けた体を引き寄せられ黒い渦に飲み込まれていった。黒い霧の鼓動に合わせるかのように赤い光が瞬き、奥からは女盗賊の甘い嬌声や盗賊の唸るような声が響いてきた。
やがてズルリと黒い霧の中から硬質ななにかが這い出てくる。カチカチと鳴る節くれだった漆黒の尖った足が無数に並び、鎧のような胴体を左右から支えていた。それは一見巨大なムカデのようであったが、腹の方には男の陰茎や女の割れ目に乳房が生えている。強大で冒涜的なその姿は歪み捻じ曲がっていながら生命力に満ち満ちており、鬱屈した衝動と苦悩の叫びのごとき耳障りな怪音を発し天を見上げていた。
その異形の化け物はラファー軍の兵士が居る砦に向かい、無数の足を蠢かせて進みだした。
そして砦の門を押し倒し、無数の手を生やした上半身のような部分を砦の内部へとねじ込む。
「た、助けてくれ」
「来るな化け物!」
砦から悲鳴と怒号が響き渡り、あっという間に砦は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。一夜にして砦は巨大な黒い異形に蹂躙されてしまった。

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