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僕は貴女の剣となりて
官能リレー小説 - ファンタジー系

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僕は貴女の剣となりて 8

 彼の者は人間の国を南で3か国、瞬く間に討ち平らげ、その名を聞いて魔人たちが配下に集まり始めました。そればかりか、魔人たちが建国した国々も従えました。そうして魔人と妖魔を力で統一すると、人間や妖精の国々に対して侵略を始めたのです。
 この侵略に対して、長年争いを続けていた各国は、統一戦線を形成できず、成す術も無く各個撃破され、残ったのは我が国を始めとする数か国のみ…そこで父上は女神フレーアのお力をお借りし、新たなる勇者を異界より召喚したのです」
 リアはそこまで一気に語ると、喉を潤す為紅茶を飲み干した。
「それが僕ってこと?」
「ハイ!タケト様…お願いですどうぞ魔王を打倒し、この世界をお救い下さい…」

 真摯な瞳で懇願するリアに、健人は問いを発した。
「いくつか聞きたいことがあるんだ。」
「何でしょうか?」
「君の言う通りなら……、僕はこの槍で戦わなくてはならないの?」
 傍らの、豪奢ではないが、精巧で立派な台座に横たえられた「聖槍」を、厳しい目で見ながら健人は言った。
「はい。その聖槍「オーバーロード」こそが世界を救う聖騎士の最強の槍と言い伝えられています」
 光り輝く青の柄と銀の刃、豪華な装飾を施された「オーバーロード」を見ながら、リアは答えた。
 確かに槍は神々しい煌きを放ち、槍術家でもある健人には、周囲にただよう霊威さえ感じさせた。天下無双の名槍かもしれないとさえ予感させる。
「ではこの世界についての質問に移るけど、まずトラゾロンと言ったね。その皇帝の死後、なぜ諸邦は分裂したの?彼の血を引くものなど、トラゾロンの権威を受け継ぐ後継者は誰かいなかったのかい?」
 質問する彼の頭の中にあったのは、中世欧州におけるローマ教皇や、武家時代における天皇家の事だった。
 中世欧州では教皇の権威が王権の裏付けの1つであった。
 中世日本において、征夷大将軍や関白などの官職は、天皇から与えられるものだった。
 幕府も豊臣家もその権威の裏付けの下で正当な統治者の立場を手に入れていた。
 だが、質問されたリアとヴェンデルは、ひどく苦い顔になった。
 地雷を踏んだか?と健人は一瞬覚悟したが、二人とも激発はしなかった。苦衷に満ちた声で、リアが語り始めた。
「残念ですが。トラゾロン陛下の御子の方々は、陛下の死の前後に相次いで亡くなられました。その中には皇太子ユージン殿下もおられ、陛下がほうぎょされてすぐ、各地の豪族や王に不満を抱いていた魔人や妖魔たちが動き、帝国は混乱し分裂…陛下の御子の多くと共にその名も歴史の中へと消えていったのです。
 動乱と跡目争いの果てに、天寿まで生き永らえた者はただ一人」

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