僕は貴女の剣となりて 7
「そうですね…初めからお願いします…正直何が何やら分からないので…」
「分かりました…少し長く成るかもしれませんが、よろしいですね」
少女のその言葉に健人は無言で首を縦に振る。
「この世界“マーシュリーア”は、遥か昔光の女神フレーアと闇の神ラーンという二人の夫婦神によって創造されました。ですが、創造された世界は残念ながら神々が望んだような完全な世界では有りませんでした。
闇の神ラーンは、これを見て一度世界を破壊し、新たに世界創造をやり直そうと女神フレーアに提案しました。しかし、慈悲深き女神フレーアは、一度産まれた命を滅ぼすなど、例え創造主であっても、為すべきではない、こう主張されこの提案を拒否しました。
夫婦は議論を続けましたが、結論を得るどころか終に二人の間で争いが起こりました。
光の女神フレーアに組したのは、我々人間とエルフやドワーフといった妖精たち。
闇の神ラーンに組したのは、ダークエルフやゴブリンといった妖魔と魔人(デーモン)たち。
幾年にも亘った戦いは、結局光の女神フレーアと闇の神ラーンの相打ちによって終わり、同時に神話の時代もまた終わりを告げたのです」
そこで、リアは嘆息するように深く息をついた。
喋り疲れたのかと思ったが、一口紅茶を口にすると続きを語り始めた。
「神々が斃れた後も、残された者たちは、尚も争いを続けました。ですがやがて魔人の中に強大な力を持つ魔王を名乗る物が現れました。
魔王は圧倒的な力で侵略を続け、世界は魔王を頂点とする闇の魔物たちが、手中に収める寸前に成りました。
しかし、ここで異界より突如として救世主が現れたのです。
それが後に魔王を打倒し、アクシズ大陸を統一する事に成る。勇者トラゾロン陛下で在らせられます。
彼は同志たちと共に魔王を打倒すと、その名声と軍団をもって、瞬く間に大陸を統一し、帝国を建国したのです。
しかし、それよりほどなくして聖暦500年トラゾロン皇帝陛下は崩御し、アクシズ大陸は瞬く間に戦乱の時代へと入ってしまったのです。
この30年に亘る戦乱は、人間という種そのものの衰退を招き、逆にトラゾロン陛下によって大陸の辺境へと追いやられた魔人や妖魔にとって、絶好の復讐の機会となりました。
各地で蜂起し、人間の領主を討ち、街や畑を制圧しそこに彼らの国を建て始めました。
間の悪い事に近年魔人たちの中に新たに魔王を名乗る程強力な魔人が現れてしまいました。