僕は貴女の剣となりて 6
いきなり異性に手を握られたことに健人は驚くが、素敵な娘だったのと先ほどの事から気丈な娘だと感じ、逆らわなかった。
黒ローブの老人、ヴェンデルがベルを数回鳴らす。
すると、身なりの良い人物たちが、亡き父王の亡骸を丁重に担架に乗せる。
騎士と思しき別の一団は、祭壇上から槍を丁重に降ろして捧げ持つ。
アレグリアと健人、それにヴェンデルと彼に呼ばれた者達は、父王の亡骸と槍と共に地下神殿を出た。
「タケト様。ようこそラティスヘイム王国へ!」
「うわぁ…」
リアがまだ赤みの残る笑顔でそういった瞬間、彼の視界が白に塗りつぶされる。どうやら外に出たらしい。健人には彼女が、自分の国を誇ると同時に心配をかけまいとやや無理をしているようにも見えた。
ようやく目が慣れてきた瞬間、彼の視界に移ったのは白いレンガで造られた綺麗な庭園とその向こうに見える大きな城だった。
城に入ると、王の亡骸を運ぶ一団と別れ、槍を捧げ持つ騎士はついてきた。無言でリアとヴェンデルの後を付いていくと、リアは城の中でも奥まったところに在る扉を開ける。
どうやら健人が通されたのは、リアの自室のようだ。
騎士たちが、台座に槍を載せると退出していく。
「ヘレティス、勇者様と私とヴェンデルのお茶を持って来て…それから次に私が呼ぶまで人払いを」
「畏まりました姫様」
(本物のメイドさんだ…)と内心で健人は驚く。
如何にも切れ者と言った整った容貌のメイドは、主人の命令を忠実に実行すると、無言で部屋を後にする。
「どうぞタケト様…ヘレティスのお茶はラティスヘイム王国一の味なんですよ…」
「はいいただきます」
リアの言うとおり、そのお茶は素晴らしい味と香りで、健人の不安な心さえ癒してくれた。
「さて…いったい何所からお話するべきでしょうか…」
そこでヴェンデルが言葉を添えた。
「まずは一通り聴いていただきましょう。現状も何も知らなくては彼も困りましょうからな」