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僕は貴女の剣となりて
官能リレー小説 - ファンタジー系

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僕は貴女の剣となりて 4

「ぐっ…うぐ…」
「お父様!!」
「お父様?」
「アーニャか…それに…貴方が、わが国を救うべく聖槍が遣わされた勇者…どうか…我が国と…アーニャを頼みます…ヴェンデルも、二人を、補佐して…やって…」
 かろうじて生きていた父王は、最後の力を振り絞ってそこまで言うと、血を吐いた。
「しっかりしてください!!」
 老人も駆け寄ってきた。
「陛下!!」
「私はもう駄目だ…愛するアーニャ、強く生きるんだ…そして、幸せに…」
 父王は、娘へ最後の言葉を告げると、意識を永遠に手放した。
「お父様ぁ!!」
 老人が、残念極まりない顔で首を横に振る。
 健人も、ショックを受けていた。病床の親族の死に目に立ち会ったことはあったが、このように倒れ伏し力尽きる人を看取るのは初めてだった。
 静かな洞窟の中、アレグリアのすすり泣く声だけが静かに彼らの耳を打つ。
「アーニャさん…」
 健人の腕の中で息絶えた父王に縋り付き、アレグリアが泣いている。
 あまりにも可哀そうで、健人はアレグリアの肩を優しく撫でる。
「どういう事なのか、教えてください」
 健人は、冷静だが強い口調で、老人をじっと見て言った。
 主君の死という状況に、沈痛な面持ちと声音で、老人は答えた。
「勇者様がいま抱いておられるのは、わが国王陛下。陛下は、わが祖国の危機を打開なさろうと、命と引き換えの秘法をお使いあそばされ、貴殿を我らの世界へと召喚されたのです」
「こ、国王……」
 自分が抱いている亡骸が、この国の国王と聞いて健人は驚愕する。
「そして、そちらの女性はアレグリア姫。陛下の一人娘であらせられます」
「……」
 父の死に涙する彼女の姿は、健人には演技とは思えなかった。あまりにも悲しげで、彼も強く共感していた。

 しばらくして、泣きはらしたアレグリアが顔を上げた。

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