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空色の小屋
官能リレー小説 - ファンタジー系

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空色の小屋 4

数分後、中から声が聞こえた。
「一応全部見たが、ワシは無事だ」
ルフェーブはそう言いながら出てくる。しかし、その様子は明らかにおかしい。
「ふむ、少しばかり予想外な事が起こっていたようだ」
「どうしたんですか?」
ダレスが聞く。
「これは呪いではない。魔法だ、それもかなり高度な物らしい」
「魔法だと?」
「この小屋の中には何かがいる。我々が信仰する神とは違った神格を持つものだ」
「一体なんなんだ?」
「ワシにもよくわからん。とにかく、このまま放っておくわけにはいかん」
ラファーティが口を挟んだ。
「では、あの小屋をどうするのですか?壊すのですか?」
「それが手っ取り早いのだが、中に生えている草が気になる。あの草は全てがアピスに与える聖なる牧草だ」
「そんな牧草があの小屋の中に繁殖しているなんて!」
「だから壊していいものかどうか判断しかねる」
「牧草が生えているのがそんなに凄いことなの?」
アジェルアが聞いた。
「ああそうだ。アピスに与える聖なる牧草は非常に珍しいものだ、様々な種類があるがそのどれもが価値がある」
ルフェーブは答えた。
「もしかしたらこの小屋を作った人はアピスの為に人知れず高価な牧草を育てていたのかもね。それなら同じ教団の人なのかも知れない」
アジェルアは言った。
ミレルが質問する。
「ところでこの牧草はどれくらい高いんですか?」
それにはラファーティが答える。
「恐らくはあの小屋の中にある物だけでちょっとした城が建つくらいですね。牧草とは言われていますが加工すれば人間用の薬にも転用できるのですよ」
「そうだ。ネリの秘薬にラレアラ丸薬、奇跡のリキュールという薬の名くらいは聞いたことあるだろう。あれらは全て聖なる牧草が使われているのだ」
三人は例にあげられた薬の名前がどれも有名でそれも高価な物ばかりだったので驚いた。
「じゃあそれならあの小屋の牧草を全部刈って売れば…」
「大金持ちになるわね」
「しかもすぐ伸びていくのを見たわ、それならいくらでも採取できるじゃないの」
ダレス達は大喜びだが、ルフェーブの表情が急激に暗くなった。
ラファーティがどうしました、と聞く。
「今、連絡が来た。薬価格の暴落を引き起こすからあの小屋は消滅させて全ての記録から抹消しろと」
「なんですって?」
聖牛教団の神殿がある城塞都市にはふたつの医療ギルドがあった。外科と内科で、薬価格を決めているのは内科ギルドである。内科医は外科医の手術を揶揄して理髪師や針子などと呼んで蔑むが、特権階級から保護を受けているため、影響力は大きい。聖なる牧草と生えている土地は略奪の対象になる可能性が高く、逃亡農奴や薬物中毒の世捨て人に始まって黒騎士から傭兵部隊までもが狙って争いになると予想できる。そんな小競り合いから村や街道やしいては都市を守るため、小屋を地上から消滅させるべきとの命令が下った。
ルフェーブはそれを聞いて呆れ返る。
「なんと傲慢な…それらしい理由を並べてはいるが、結局は面倒ごとから逃げたいだけだろう」
ダレスは言う。
「部外者の俺にはよくわからないが、貴重な牧草が失われるのは惜しいな」
「それはそうですが、命令は絶対です。小屋から牧草を持ち出すことも駄目です。小屋に関する物は全て消去せよ、との命令ですから…」
ラファーティが言った。
「ラファーティさん、貴方こんな高価な薬草を全て処分するって言うの!」
「これがあれば助かる人も居るのですよ?」
アジェルアとミレルが騒ぎ始めた。

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