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地下水路
官能リレー小説 - ファンタジー系

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地下水路 3

「まずはあの逃げていった少年が気になるな」
戎凱が言う。そして、ちらりと全裸の手下を見て続ける。
「よし、今からお前が店の奥に行って様子を見てこい…。油断をした罰の代わりだ」
「しかたねえなぁ」
手下は全裸のまましぶしぶ店の奥に入っていった。
松明片手に男が歩いていくと、両の壁に錠のかかった扉が並んでいた。

『食堂』『大部屋・壱』『い個室・伍』『ろ個室・壱拾』

それぞれの使用目的の書かれた看板を確かめながら進むと、段々と戎凱たちの喧騒が小さくなっていく。
履き潰した草履が泥を踏みしめる音と、火花の弾ける音だけが響く廊下。
男の背筋に寒気が走る頃、やっと行き止まりに辿り着いた。

「どれどれ……執、務し、つ? おっ、当たりみてぇでさぁ!」

目的地らしき部屋を見つけた男は一息つくと、観音開きの扉に耳を付け中の音を拾っていく。
思ったより静かな室内からは、何かを書きつけるカリカリという音がするだけだった。
他の部屋に出入りした痕跡が無い以上、少年はこの部屋に入ったはずである。
おそらく主人にあたる人物が居るならば、報告はすでに終わっているのだろうか。
男は扉を少し開けて中を見る。主人らしき男が巻物に何かを書いていて、そのそばに少年が立っている。
主人が書き終えると、巻物が禍々しい赤い光を放つ。
男にはそれが何かわからなかったが妙に嫌な予感はした。
「引き返すか?それとも奴等の様子をもう少し見てからにするか?」
男は迷った。
彼が迷っている間になにやら騒がしくなってきた。音源は水路のある辺りだった。
もしかしたらその騒ぎは主人らしき男達にも聞こえているかもしれない。だが、彼は赤く光る巻物の前に座ったままだ。
「あの巻物が光り出してから騒がしくなってきたが…?」
 
すでに下っ端の男が判断できる状況では無いと気づき、戎凱に指示を仰ごうと騒がしい入り口へと戻っていったのでありました。
扉の向こうから漏れ出していた「ふむ……あちらの鼠は帰りましたか」という、若い男の声に気付くことなく。

万屋の前で屯していた賊らの周囲に赤い光の玉が浮かび上がると、濃厚な獣の気配が現れたではありませんか。
人の片腕ほどの体躯に石の鱗のような肌を持つ大鼠――キュウソ、金属の針のような毛を逆立てた鼠――テッソ、膨れた体でコロコロと転がって触れれば爆発するハツカネズミ――コダマ、焼けた石炭のように周囲を焦がす灼熱の鼠――カソ。
この地下を探索する人間らを何百人も退けてきた小さな猛獣らが、群れをなしてジリジリと戎凱らの逃げ場を無くしていきます。

「おぃおいおい、随分と熱烈な歓迎じゃねえか。 お前らにやるもんなんて、今は何も持ってねえんだけどなぁ……」

四半刻もたたずに骨の一欠けらも遺さずに食い尽くされるかもしれない状況に、男らの頭は愉快そうに顔を笑みに歪めた。

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