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淫獄
官能リレー小説 - ファンタジー系

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淫獄 6

さすがにラブホに行っておあずけにはされないだろうと、真希は半分本気で彼をラブホに誘った。
「ちょっと散歩してみませんか?」
マンションのビルから出ると、彼が真希の手を握って歩き出した。
それが当たり前のようにされたので、真希は上機嫌で連れられて歩いていく。
しばらく歩いて住宅街を抜けて、団地の建物が見える公園のようなところについた。
池がある。街路樹が植えられていて、そこを抜けると団地の建物のそばに出るらしい。
犬の散歩をしているジャージ姿の初老の男性とすれちがっただけで、あまり人が通らない。
公園のベンチで真希はブラック無糖の缶コーヒー、彼はオレンジジュースを飲んで、空を見上げると満月ではないが少し欠けた月と星が見えた。
「コーヒーの味だね」
「オレンジジュースの味も」
もう一度キスをした。キスだけで歩けなくなりそうなぐらい真希はうっとりとした。
彼の部屋に帰ってきて、二人でテーブルの上ををかたづけをした。
残りの開けていない缶ビールを冷蔵庫にしまうとき真希は「料理はしないの?」と聞いてみた。
インスタントや外食で済ますことがほとんどで、よく聞けば食べない日もあるらしい。
「低燃費なの」
「食費より服を買う感じ?」
「そんな感じ」
彼が浴槽に湯をはり、入浴剤を入れて準備している間に、真希は本棚に並んだ本をながめていた。彼はミステリー小説と詩を好んでいるらしい。
真希は読書なとまったくしない。
風景と猫の写真集。グラビアアイドルの写真集もあるのではないかと、散らかさないように気をつけなから探していると、彼は部屋にかけてある鞄からデジカメを取り出した。
「写真が趣味だったんだね」
「うん」
「どんなの撮ったの?」
本棚のはじに茶封筒があり、その中に現像された写真が入れられていた。
花や猫、神社やビルの間の裏路地、そして、最後の一枚を見て真希の微笑は消えて、手が止まった。
SMの着物姿で縛られている女性の写真。
この一枚はモノクロで他の写真とはちがう迫力が感じられた。
「これ、すごい……」
彼はうなずいただけで、何も言わなかった。
真希は乳房のある彼の裸を見て、綺麗だと思った。芸術的な彫刻のように感じた。
彼は乳房と股間を隠して照れくさそうに立っていて「あたしのも見せるから、ちゃんと見せて」と真希は背後から彼を抱きしめて言った。
「僕はね、生まれつきこうなの。信じてくれる?」
「世界にたくさん人がいるんだから、もしかしたらたくさんいるかも」
すると彼は「うん」と言って肩を震わせて泣いた。真希には彼がどれだけ悩んで今まで生きてきたかはわからないけれど、今は泣きたいだけ泣いたらいいと思った。
一緒に浴槽に入り、キスをして、彼は真希の髪を洗い、上がると仲の良い姉妹のように髪を乾かしあった。
ベットで抱き合ったまま眠って、その夜はセックスをしなかった。
「おはよ、マキさん」
真希が目ざめると、彼は窓の前に立っていて、カーテンの隙間から朝の光がさしこんでいた。
添い寝をしただけなのに、百万回セックスしたような愛しさが真希の胸の中で穏やかな波のように広がっている気がした。

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