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淫獄
官能リレー小説 - ファンタジー系

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淫獄 5

しばらく抱きつかれて、匂いにつつまれている気がして真希はうっとりとしていた。
そばで密着しているだけで、すごく気持ちいい。
客が真希によりかかられて、たまに太腿のあたりを撫でられながらじっとしているのがなんでなのか、よくわかった。
彼がゆっくりと手をほどいて立ち上がった。
「ごめん、トイレに行きたくなっちゃった」
「えっ、あたしのほうこそごめんなさい。我慢しないで行ってきて」
三歩、彼は離れたたあと振り返って立ち止まった。
「キスはまたあとで」
急に真希のほうが恥ずかしくなってしまった。
彼がトイレで水を流す音がやけに耳に残った。
「ちゃんと手を洗ってきましたかぁ?」
「あたりまえです」
真希がわざとおどけて言って、立ち上がった。
「あたしもトイレ。ねぇ、するの見たい?」
「いってらっしゃい」
真希はトイレに入って下着を下ろして、もう濡れているのに気がついた。
ここで今すぐオナニーしたら、すぐいっちゃうんじゃないかと思った。
そっと、われめにふれてみる。
声が出そうになるのをあわてて我慢した。
あとでしたくならないように小水をすると、丁寧に拭き取った。
手を洗って、かけてあるタオルで拭くと、彼が使った直後でまだ湿り気があって、それてまた胸がざわつく。落ちつけ、落ちつけ、落ちつけ、と目を閉じて頭の中で言ってからトイレから出た。
彼の隣に座ってみる。
彼が身を引いたり避ける感じがしたら、テーブルごしの向かいあわせに戻るつもりで。
真希は彼が本当はゲイで、優しさからなりゆきまかせで体をさわられても我慢しているんじゃないかとまだ内心で疑っていた。
「きれいな髪ね」
「マキさんは染めているから傷みやすいだけなんじゃないかな」
彼はさらさらの黒髪で、真希はほどいてそっと撫でてみる。
「僕にもさわらせて」
真希は髪を撫でられて、毎月美容院に行っているのに、今月はまだ行ってないので、髪をさわられるなら美肌エステのついでに行っておけばよかったと後悔した。
「この部屋、テレビないんだね。一人でいてさみしくないの?」
「テレビはないけど、ラジオはあります」
「ラジオなんて聴くのひさしぶり」
ラジオは小さめで本棚に置かれていた。
真希はそれを目覚まし時計だと思っていたが、ラジオだった。
店内は少し薄暗くてずっと有線の洋楽が流れているが、最近の流行りの曲を真希は知らない。
「なつかしい」
彼はラジオから流れた曲を聞いてつぶやくように言った。流れた曲は映画で使われた曲で、その映画を思い出したらしい。
「映画が好きなの?」
「好き」
真希は、彼と店長が古い映画館から出てきた噂話を思い出した。ポルノ映画が趣味なのか。
「どんな映画が好きなの?」
「洋画でも邦画でも好きな映画はいろいろ。マキさんは映画は?」
「あんまり。ジブリのアニメはテレビでみたよ」
「ジブリのアニメも好き。服はかわいいとはとてもいえないけど」
「そこがポイントなの?」
「服とか着物とかきれいでも、だいなしな映画もいっぱい」
俳優のほうが衣装とくらべられてしまう。彼はちょっと変わった映画観賞をしているようだ。
ラジオを二人で黙って聞いていたり、おしゃべりをしながら、真希はビールを飲んで軽くほろ酔いになってきた。
「今日は帰るなら、タクシー呼ぶけど」
「泊めてくれないなら、連れて帰るよ」
「お持ち帰り?」
「部屋はかたづけてないから、ラブホ」
「それもおもしろいかも」
真希のアパートはマンションタイプではないし、和室で、押し入れとふとんがある昭和の雰囲気で、彼の部屋とはちがいすぎる。
真希はそれでも和室が落ち着くのだからしかたないのだが、彼はどんな顔をするか楽しみではある。

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