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淫獄
官能リレー小説 - ファンタジー系

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淫獄 21

男性でも女性ホルモンを投与し続ければ乳房らしき形状の体ができること。
それが成長期より以前から最近までおこなわれてきたという可能性はないか。
それらの記憶を催眠によって別の記憶に変えられていないか。
二人とも同じ夢をみたと認識するのは共通する体験を本当はしているが、催眠によって忘れさせられているか、別の記憶にすりかえられていないか。
石田弘美の推論はこうした内容で、二人は石田弘美が思っていたよりも冷静に話を中断することなく、黙って聞いていた。
「もしそうだとすればカウンセリングで記憶を確認することに私は協力できます」
記憶。
子供のころといっても過去の何歳ぐらいまでの出来事を人は記憶できているか。
記憶といっても、断片的であることがある。
色や光など見たもの、聞こえた音、匂い、なにかにふれた感触など、それが何であるかよくわからない記憶が思い出されることがある。
それを、統合してしまうときに、実際の出来事ではない思い出の捏造もありえる。
「今朝の朝食で食べたものを催眠を行わなくても思い出せたり、今日の午前中に霜月さんが私を迎えに来てもらいましたが、その時刻なども思い出せると思います。そうした思い出せている記憶から催眠で確認していくことで誤差を起こさない練習が必要となります」
「催眠で思い出す練習、ですか?」
「たとえばですが、さっきからポテトチップスを何枚食べたのか、明日になってポテトチップスを食べたことは催眠を行わずに思い出せる、しかし何枚食べたかは意識していないので思い出しにくいかと。催眠中に食べた枚数を数えると意識して記憶をたどれば枚数を思い出すことができます」
「自分の意識していなかった情報を知ることができるということですね」
霜月玲が確認するように質問した。
「指でつまんで口に運んだ回数を数えます。しかし霜月さんが催眠でも、私が何枚のポテトチップスを食べたかとなると正確な情報は得られません。ずっと見続けているわけではないからです」
「本人が体験した記憶以外は思いちがいをしてしまうということがあるということですか」
「そうです。そして遠い過去の記憶を思いだそうとすれば、このときはこうだったと他人から聞かされている情報を事実と思いこみ、あたかもそのようなことがあったような感覚におちいることもあり、本人の記憶とはいえ正確さを失うこともあります」
ここまで話して石田弘美は冷めた紅茶をもう一口飲んで喉をうるおした。
退行催眠で思い出すことで確認できるのは、自分がどんな思いこみを過去に対して持っているのかを確認できるだけで、事実の再現ではない。
「思い出した記憶というものは、夢と同じように曖昧で、あてにならないものです。しかし、思いこみでもそれが、その人にとっての人生の過去ということになります」
「過去の記憶への感じかたか変わっていくということですか?」
「そうです。催眠で確認したことで過去だとしっかりと意識することで、気持ちの整理をつけるということです」
「石田先生、催眠状態と人が眠っている状態というのは、どのようなちがいがありますか?」
「見た目がではどちらもかわらないように見えますが、意識のありかたはちがうと言われてます」
顕在意識と潜在意識。
眠っている間は意識は潜在意識にあるといわれる。
催眠中は意識は顕在意識にある。
周囲の音が聞こえていたり、見えていたりする。
「わかりやすくいえばですね、目がさめているのと同じ状態の意識があるのが催眠中。睡眠中は深層意識に意識があるので、呼びかけても本人には聞こえていない状態です」
石田弘美は「ぼっちゃま」に説明しながら、いつこちらのお願いを切り出そうか考えていた。

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