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淫獄
官能リレー小説 - ファンタジー系

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淫獄 20

「お茶の用意を頼みます」
「はい、ぼっちゃま」と霜月玲が返事をするのを聞いて、カウンセラーは聞き間違えたかと、首をかしげた。
落として壊したらしゃれにならなそうなかわいらしいティーカップと、なぜかポテトチップスが皿に乗せられているという、なんともちぐはくな組合せ。庭のテラスに置かれたテーブルクロスのかかったテーブルで三人でお茶を飲んだ。
「この紅茶にはポテトチップスがやっぱり合うね、レイさん」
「コカ・コーラのほうが合うと思います」
「僕はあまり炭酸飲料は好きじゃない」
カウンセラーの石田弘美はポテトチップスを一枚つまんで、二人の会話を聞いている。
「石田先生は普段は何をよく飲みますか?」
ぼっちゃま、僕、見た目はどうみても女性なのに、ボーイッシュなだけ、いや、でも服装の趣味は男性的でもない。どういうことなのかと考えていて、ふいに質問されたので「普段は珈琲です」とあまり考えず答えてから、紅茶を用意してもらったのに失礼だったかもと石田弘美は思った。
「すいません、紅茶もたまに飲みます。とてもいい香りの紅茶ですね」
二人がそれを聞いて微笑している。
石田弘美は、二人のなごやかな雰囲気に拍子抜けしてしまった。
「僕はいちおうこれでも男性ですよ」
「そうなんですね」
石田弘美は紅茶を一口飲んだ。
美容整形手術というのはお金をかけるとこれほどまで男性を女性らしくできるものかと石田弘美は考えていると、彼がうなずき、霜月玲が話を始めた。
「ぼっちゃまは生まれつき女性的で声変わりなどもありませんでした。私はぼっちゃまが七歳のころから一緒に暮らしております」
「僕はね、石田先生、父親が好きではありませんでした。女性でも、妊娠したいと強く望むと想像妊娠したりすることがあります。僕の場合は、男性への嫌悪感でホルモンバランスが変わって、身体的な特徴が女性的になったのではないかと想像しているのですが、どう思われますか?」
石田弘美は「人間の身体的な成長は遺伝子で決められていて、心のありかたによってそれが変化するとはあまり考えられないと思われます」とあえて言い切った。
進化論では環境に適応するように進化するという考えかたもある。男性と女性では男性のほうが多いがそれが女性の割合が増える進化の過程ならばありえるという考え方ならありえない話ではないはずだ。
石田弘美はそこにはふれずにおいた。
解決策につながらないからだ。
「では、どのようなことが考えられますか?」
霜月玲が質問した。
石田弘美は「それはのちほど話すとして、今、生物学的には男性ですが見た目が女性的であることに強い不満があるか、それが気になるところです」と二人を見つめて言った。
「僕は、どんな見た目でも僕だと思っているので、不満は男性から性的な対象として見られやすいことぐらいです」
「そうですね、それですとカウンセラーの私よりも美容整形外科でご相談なされたほうが具体的な方法が提案してもらえるでしょう」
その答えを聞いて彼は笑顔でうなずいた。
「さて、先ほどの質問ですが、これはあくまで私の推論ですから、可能性の一つとしてお聞き下さい」と石田弘美は前置きしてから話した。

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