淫魔剣トリス 34
こいつの場合は原因が二日酔いだから問題はそれほどないんだろうがな…それにしてもこんな感じで大丈夫なんだろうか。
「はい、リリィさんにご主人様、ジュリアさんから差し入れの一角ネズミの卵酒だそうですよ?これに瑠璃の葉を入れてカクテルにすると酔いにいいなんて知りませんでした!」
魔剣はさすがに船酔いしないのか、元気そうに動き回るトリスはそう話しかけると怪しげな液体の入った試験管を俺たちに差し出した。
「ああ、すまないなトリス…しかしだな、リリィよ…いったいどんなところなんだヴァルナーっていう場所は…俺も行った事がないからなんとも言えないんだが…」
「んぐっ…んぐっ…あ〜…生き返ったぁ…ふぅ〜っっ…んで、ヴァルナーね?あそこは北の海の端にある小さな国でね、水が豊かな海洋国家なんだ、原産の万年氷は魔宝石の加工に使えるから輸出国にもなってるし…それに夏の間は避暑地として人気があるね、後はやっぱり魚がたくさん捕れたり、輸出しても多いくらいには獣の毛皮がたくさん取れる街だね」
「…なんだかよくわからないけど、それでその氷山までは何日かかるんだ?」
「首都から歩いて二日かな…その前に粗悪品でも魔宝石を購入した方が良さそうだね?魔剣でも固い氷山の妖魔は厄介だからねぇ…」
あらましを聞いた俺はふむふむと頷きながらもリリィの顔を見つめた。
「ちなみにリリィよ…その氷があればこれから手に入る予定の魔宝石は 加工とかは出来るように なったりするのか?」
俺の質問に、背後から覚えのある声がした。
「できますよ。でも…技術を持った方や工房が少ないのですぐにとはいかないと思います。これから行くヴァルナーには加工できる錬金術師がほかの地域よりは多いのでここで探したほうがいいでしょう」
ジュリアがいつの間にか俺達のそばに戻ってきていた。
「そいつはありがたいな。さっさと氷を集めて、どこか加工できる工房探そうぜ。あれがヴァルナーか?」
「そ。あの町よ。あら?船足が遅くなってない?」
「そういえば…」
「どうしたのですか?」
ジュリアが背後の操船台めがけて問いかけた。
するとこの船の航海士が叫んだ。
「ヴァルナーの警備艦隊が出航するってんで、道を開けてんです。ほら」
「うわあ〜」
「大きな船ですね」
「何かあったのかな?」
かなり立派な大型艦2隻と、それに従う何隻かの艦がこの船の左側をかなり急いですれ違って行く。
ほかにも何隻かの船が道を開けるためにあちこちに停まっていた。
走り去る警備艦隊を見送りながら、さっきの航海士が言った。
「最近、海賊が増えてるんです。通報があったんでしょう。あれだけの艦隊なら海賊くらい潰してくれますよ」
「うむ、このまま入港する。速度を戻せ」
「了解!」
航海士の近くにいた船長の指示を受け、再び船が加速する。
そのまま船はヴァルナ―の港に接岸した。
「ふー、揺れないってのはいいわね」
「全くだな。揺れるのはトリスやリリィのおっぱいだけで十分だしな…さっさと魔宝石手に入れようぜ」
「……」
ジュリアに睨まれてしまった。彼女だって結構立派なものを持ってるんだよな……ってそうじゃない。変なこと言ってないで、さっさと向かうか。