淫魔剣トリス 24
この町は港も近くにあるし、王都に向かうための宿場町でもあるからか、海外の文化も様々に入ってくるため、そういう点ではとてもいい環境だと俺は考えている。
とりあえず小遣いを与えたトリスはタチバナ国のきらびやかな菓子類を購入し、色とりどりの花や宝石のようなそれを食べながら幸せそうに町を歩き、俺もそれに続くことにした。
「そういえばトリスは封印されるまでの記憶ってあるのか?色々と今の世の中のことを知ってほしくて連れ出してきた訳だけどさ、こんな風に市場を歩いたりとかしたことってあったのかな…」
「うーん、それがあんまり覚えてないんですよね…あった気はするんですが…もしよかったら今度リリィさんに私の記録なんかを調べてもらうことは出来ませんでしょうか?何かあれば思い出すとは思うんですが…」
「記憶喪失…って訳でもなさそうだが、そうか、まあトリスは日常生活には不便してなさそうだからな、とりあえずリリィに会ったらー」
と、言ったところで、ふわりと俺の足が浮き上がった。
「へ?」
理由は簡単、通行人にぶつかったからだが…そのまま通行人共々思いきり転がってしまい…
「あいたたた…全く何だよ…って、うわああああっ!」
ごろごろと転がり、それが止まった先、目を開くとそこには…女性の股間があった、しかも魔力を使うタイプの術者なのか、当然のようにパンツは穿いておらず…土手と綺麗に無駄毛の処理された股間が目の前にある。
坂道だったとは言え、油断したぜ…と思っている間なんてない。
俺が痛みを無視して慌てて立ち上がるのと、彼女が恥ずかしそうな悲鳴をあげるのはほぼ同時だった。
「きゃああっ!!」
「すまない!大丈夫か!」
捲れたローブを押さえ込んだ、目の前の術者。
年の頃は俺と同じくらいか。
ちょっとぽっちゃり体型だけどかなり可愛い。
「ローラン様!」
「ジュリア!」
なんだなんだと見ている町衆の中、俺達に駆け寄ってくる2人の女性。
トリスともう1人はこの娘の友達…ん?
「えっ!ローラン!?」
「リリィ?」
俺達はお互いに気づいて声をあげた。
「痛いよ…どうなってるのよ…」
「あっジュリア、大丈夫?」
「ええ…」
俺とリリィが手を差し伸べてジュリアさんを立たせる。
公衆の面前で秘所を見られたからものすごく恥ずかしそうに憮然としている。本当に申し訳ない。
「ええと…すまないな、俺の名前はローラン、リリィと同じギルドで冒険者をしているんだ、本当にごめんなさいっ!」
「あ…貴方があの…で、でもあんな酷いことをされたのは始めてだわ!もうっ!気を付けてよっ!」
こっちを知っているのかそう呟くジュリアは不満げにまだ初めてなのにと呟きつつ、ぷいっとリリィを一瞥した、リリィは苦笑しながらもこちらを見つめて話しかけてくる。
「まあまあ、とりあえず私の工房に入ろうか?もちろん酒は出ないけれどね?ジュリアもそのために来たんだし、構わないでしょう?」
「え、ええまあ…仕方ないですね…それで…そのメイドさんが魔剣なのですか?」
とりあえず溜飲を納めてくれたのかジュリアはそう呟いてリリィに訪ねかけた。