淫魔剣トリス 20
(こりゃ恨まれても仕方ないな…勘弁してくれよ?みんな…)
心のなかでそう謝りながらも、薬による性欲には耐えきれず、俺は種馬のように少女達を救うため、腰を振り続けた。
その度に甘い声が上がり、処女を俺に捧げてしまった冒険者達も少なくはないだろうが、永遠にあのままでいるよりはいいだろうから勘弁してもらいたい…気づけば日は沈み始め、俺も薬が切れてきたのかくたくたになる頃には、何とか全員の蘇生が終わっていた。
我ながらよくやったぜ…
「うっ…ぐす…」
「トリスちゃん…」
トリスが泣いている。
その横ではトリスを必死に押さえ宥めてくれていたモニクとリリィが困り顔だ。
あんなに泣かれたのは初めてだ。
どうしたものかな…
俺は重い体に鞭打ってトリスに近づく。
周りでは蘇生した娘達や他の娘達が佇んでいる。
正直、トリスにはかなり悪いことをしたと思う。
毎日Hな事をしてくれている彼女の前で、暴走したインキュバスのように女の子を抱きまくったのだから。
罪の意識が重しのようにのしかかってくるぜ。
トリスに近づくと、涙目で睨まれた。
どんよりとした瞳、悔し泣きに腫れた目元、必死に耐えるように握りしめられた両拳…
「トリス、悪いことをした…すまん」
俺は深く頭を下げた…
!!
とっさに歯を食いしばる。
顎が外れそうな衝撃。
強烈な閃光が目の中を満たして、視界が、頭がくらくらと揺れる。
「トリスちゃん!?!」
モニクの驚く声。女の子達が大きな波紋のようにどよめく。
トリスの痛烈な右ストレートが俺の左ほおに炸裂した。
「くっ…」
思わず呻いてしまう。でも当然だよな。それだけの事をした。よりによって彼女が見てる前で。
衝撃から立ち直るにつれて、周りの娘達の「うっわぁ、モロに入った」とか「スゴ…」といった声が聞こえてくる。
(いい恥さらしだな…まあでも仕方ない、それだけのことをしたんだからな…)
そんなことを考えていると、ふわりと鼻先にいい香りがした、トリスの愛用しているらしい洗髪料の香りだ。
そう、言うまでもないが強烈なパンチを食らった後に、何故か俺はトリスにきつく抱き締められていた。
「と…トリス?」
「ふえええええええ!ごしゅじんざまああああ!ごめんなざいぃぃっ!でも、トリスはっ、トリスはあぁぁ〜〜っっっ!!!」
泣きじゃくるトリスの柔らかな髪を撫でて俺はトリスを優しく抱き締めた。
トリスは裸の俺を抱き締めながらも赤ん坊のように泣いていた…さすがにトリスも俺がしたこと自体は責める気はないらしいが、それでも気持ちまでは追い付かない、ということらしい。
子供のように泣きじゃくるトリスを抱き締め、背中をなで回しながら、俺はトリスに謝ることにした。
というか逆の目にあった場合、俺も耐えきれなくなってしまうのは間違いないからな。
「すまないなトリス…こんなことしちゃって…謝って許されることじゃないけど…本当にごめんなさいっっ!」
俺の言葉に対して、ひたすらにトリスは泣きじゃくる、逆効果ではあるかもしれないが、しかし普段と違いここまで泣いているトリスを見たらこう言いたくなるのも仕方ないことだろう。
しばらく泣きじゃくった後に、背中を撫でてトリスが落ち着くのを見計らってか、俺たちにゾーラが近づいてきた。
「も、申し訳ないっ!トリス殿っ!私がふがいないばかりにっ!どうかローランを恨まないでくれっ!全ては私の責任だっ!」