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淫魔剣トリス
官能リレー小説 - ファンタジー系

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淫魔剣トリス 14


怒りの声(?)を張り上げる何かを覆うローブがバサリ、と落ちる。
そしてその中から現れたものは・・・。

―――うにょうにょうにょっ。

(・・・うえっ)

魔剣状態のトリスから、そんな声が聞こえたような気がした。
何本、何十本もの触手が絡まったような、肉の塊だった。
まあ、相手は人間を宝石に変えるような外道錬金術師だ、これくらいの展開は予想されてしかるべきだが・・・。
知らなかったとは言え、あんな気持ちの悪いものに刃を立てたことが嫌だったらしい。
開放されていた力が萎え、第2形態が解除されかかっている。

「おいトリスっ!?力が抜けかかってるぞっ!しっかりしろっ!!」

俺の言葉に出力の低下こそ治まるものの。
モチベーションの回復までには至らなかったらしく、それ以上出力が上がることもなかった。
人に化身するほどの力を持つことが、ここで思わぬ足かせとなってしまった。
できるだけ早く決着をつけなければ、トリスのやる気がさらに落ちて第1形態に戻ってしまいかねない。

(まったく、面倒・・・「なっ!?)」

俺が内心で愚痴ったその瞬間だった。
突如、肉塊がうねうねと蠢かせていた触手を四方八方へと乱射した。
近くにいた俺は、トリスのことに気を取られていたこともあり、全力で防御と回避に専念する。
だがヤツの狙いは俺への不意打ちなどではなかった。

「きゃ・・・あぶッ!?」
「!?」

襲い来る触手をさばきながら、声がした方向に視線を向けると。
放出された触手のうちの1本がモニクの上半身を飲み込んでいた。

(しまった!ヤツの狙いは向こうだったか!?)

ならば今すぐヤツを仕留めるのみ。そう思ってすぐさま触手の塊にトリスを突き立てる。
しかし、敵の動きは一向に止まる気配を見せない。
そうこうしている間にも、敵の無差別攻撃によってクリスタちゃんやリリィからも悲鳴が聞こえてきた。
もはや一刻の猶予もない。
俺は萎えているバカ魔剣に一喝した。

「トリスっ!魔法剣発動!吹っ飛ばせえええぇぇぇッ!?」

俺の一喝に応えるかのように、突き立てた刃が大きく輝く。
あふれた光は奔流となり、あたり一面を包み込んだ。

(ひいぃんっ!?ひどいですよ、ローランさまぁっ)

光の奔流が消えるのとほぼ同時に、トリスの抗議する声が聞こえたような気がした。
いや、実際抗議しているのだろう。
その証拠に魔剣は黒フード改め触手の塊の体液と思われるネバネバにまみれてしまっている。
これがとどめとなったのか、完全に第1形態に戻っていた。
この魔剣女、俺の体液(何のかはあえて言わない)で汚されることは喜ぶくせに、それ以外のは嫌がるとゆー、妙に潔癖なところがある。

「悪い悪い。この埋め合わせはちゃんとするから、そう怒るな」
(―――!)

俺の謝罪に、トリスは敏感に反応した・・・ような気がする。
ああ、今夜も・・・ヘタすると戻ったら即搾り取られそうだ(苦笑)。
しかし危なかった。黒フードが人間でなかったことにも驚きだが、まさか土壇場であんな反撃に出るとは思わなかった。
もし俺の武器がトリスでなく普通の武器だったら、最悪モニクたちはヤツの肉盾か餌食にされ、苦戦は免れなかっただろう。
しかし俺はトリスという頼もしい相棒がいて、ヤツは爆裂四散することとなった。
蛇の手うんぬんのことは気になるが、全滅しかけていたことを考えればあきらめもつく。
さて。とりあえず後ろで触手の残骸から抜け出せなくなってるモニクあたりから助けるとするか。
そう思って振り返ったその時。
視界の端っこ、正確には触手に放り投げられ、木の枝にしがみついていたリリィが、ただならぬ表情で何か叫ぼうとしていたのに気づいた。

「バカっ!?気を抜くな!倒したのはただの傀儡(くぐつ)!本体は別のところに・・・!」

彼女が何か言い終わるより先に。
身体にドン、と背後から何か押されたような衝撃が走る。
それが押されたのではなく、背中から剣で貫かれたのだと理解したのは一拍おいてからのことであった。

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