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アラサー冒険者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アラサー冒険者 46


「・・・やばいやばい、危ないところでした」
多少ヨタヨタしながらも、バグーは再び高度をとり始める。
その手には、例の奇妙な現象を起こす巻物が握られていた。

「皆さんせっかく私を倒せると思ったんでしょうが、すみませんでしたねぇ・・・」
カサカサカサカサ・・・・

・・・賢者の日記帳。
神代の時代、バグーら合成生物を創造した何者かが作り出したと思われる"事象調整システム"である。

持ち主の目の前で起きた出来事に限定されるが、事象発生直後の十数秒間、発生した事象が巻物上に「文章」となって自動筆記される。
持ち主は、その文章が消えるまでのわずかな間に、持ち主自身の「血文字」を用いて、既に起きてしまった事象を文字通り「書き直す」ことができるのである!!!

アイテムの出自については諸説ある。が、これまでのバグーへの攻撃が、他者に加えられたりするなどの奇妙な「無効化現象」となって繰り返されていたのは、ひとえにこのアイテムの能力ゆえであった・・・

「・・・ねー・・・ちゃん・・・」
「スコルゥゥゥウウ!!!!」
人狼の若者の吐血にまみれるのも構わず、ランディは倒れる彼を抱き起こす。

「マ、マリアッ……早く、早く、イヌっコロに回復をッ!!」
「・・・およびだし しましたが ほんにんの でんげんが はいっていないため おつなぎできませ」
げしっ
ごろごろッ
「んだよ、魔力切れかこの役立たずッ!!」
シーマがいきり立ちながら蹴りを入れるが、短時間に強力な祈祷を繰り返してしまったマリアはマグロのように地面を蹴り転がされるだけだった。


「こ、こうなったらッ……」
よろめきながらも立ち上がったアンナが手にしているのは、スコルが先ほど見事に叩き折った、丸太程もあるドスミノスのツノである。

「おおっと、コワイコワイ」
カサカサカサカサ・・・
「そんなもので、お得意の剣技を振るわれたらたまったものじゃあありません」
ぶうぅん。
「必殺の真空斬りも、宙を素早く飛び回れば問題ありませんからね♪」
わざとらしく怖がって見せながら、バグーは羽根を震わせてアンナたちから距離をとり始める。
「・・・残念ながら短い逢瀬でしたが、またお会いしましょう、我が愛しい妻たちよ!!」

・・・カサカサカサカサ

低空をふらつきながらも遠ざかるバグーの乾いた声が、次第に小さくなってゆく……

「・・・さよ〜な」
……かに見えた、その時である。
「ら?」

ガシッ。

「!?!?!?・・・な、なんですかいきなり、そんな、しがみつかれたら飛行が・・・」
「ナカマ ヲ オイテ ニゲルキカ バグー!?」
「ッ!?・・・き・・・貴様は、貴様はッ!?」

「バァグゥゥウウウ!!!」
「ギィィイイイガァァァアアア!?!?!?」
利用するものとされるもの。
狡猾なるものと愚かなるものが、もつれあったまま地面を転がって、停まった。

「サア イマダッ・・・ヤレッ、ニンゲンノ メスッ!!!」
「は、離せッ、離しなさいギガ!?・・・あの年増剣士の剣技をまともに喰らったら、お前も無事では・・・」
グイッ
ガシィ
「デモ・・・デモ オマエモ……」
「!?」
「……オマエモ シヌンダロ バグーッ!?」

「そんなわけないじゃないですか、おバカなウシ風情が」

「ム、グゥ!?」
「・・・何てったって私にはこの、賢者の日記帳が・・・」
ベトッ。
「な・・・なんですかこの、おびただしい血はぁあ!?」

文字が浮かんでくるはずの巻物には、大量の血液がベッタリと付着してしまっていたのである。
これでは事象の判読はおろか、書き直しなど到底望めない!!

「こ、この・・・この血液はまさか、ギ、ギィィイイイガァァァアアア!?!?!?」

「・・・ヒキチギッテ チヲ アビセテヤッタゾ バグー?・・・・・・・・・サッキ セッカク クッツイタ バカリダッタガナ・・・?」

ギガは、治りかけた自らの左腕を千切ることで巻物に血を浴びせ、身を犠牲にしてかの"賢者の日記帳"を封じてしまったのだ!!
「お、お前はッ、オスウシのごとき家畜の分際でぇええっ!!!」
「・・・ソノオスウシゴトキノ イノチトホコリニカケテ オマエ ニガサナイ!!」

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