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アラサー冒険者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アラサー冒険者 42

むなしさを噛み締めながら、そばでうずくまったままのメイドを抱き起こしてやる。
余程恐ろしかったのであろう、メイドはテーブルクロスを被ったままで立ち上がると、そのままアンナにしがみついてきた。
「!?……もう、危険は去りましたよ?」
と、いつもの穏やかさを取り戻したアンナが彼女を安心させようとした時だった。

メイドは離れるどころか、しがみついたままでいきなり、唇を重ねてきたのである!!
「んむッ!?」
困惑するアンナの隙をつき、一瞬で唇を割った舌先が彼女の喉奥に入り込む。

ゴクン!!

小さな小石ほどの固形物を飲み込まされて、アンナはようやく相手を突き飛ばした。
「な、何を……!?」

勢いよく突き飛ばされた相手の上にかぶさっていた純白のテーブルクロスが、フワリと舞い落ちる。
カサカサカサカサ・・・
耳障りな音が響いて、アンナは相手に目を凝らした。

「お、お前はッ!?」
「お初にお目にかかります、カストールの姫騎士ことミセス アンナ・カストール殿下」
聞き取りづらい、渇ききったかすれ声。
「噂以上の剣技と生命力、あなたこそ我が花嫁に相応しい……」
「だ、黙れ化け物めッ!!」
落ちていたレイピアを拾い上げ、叫びざまに抜き打ちを放つ。
「おおっと、危ない危ない」
ブウン、と羽音をならし、相手は宙を翔んであっさり彼女の剣撃をかわした。
「そんな細っこい剣でも、あなたのパワーならかすっただけで致命傷ですからね。高みの見物をさせていただきますですよ?」
メイドの制服を脱ぎ捨てたそいつは、どす黒い羽虫の姿をしていた。
「太古の人々が愛好していたと言う伝説の作業着だったんですが、今の剣圧だけであちこち破れてしまいました」
あざ笑う昆虫人間を見上げつつ、両足に力を込め、上空への一撃のチャンスをうかがうアンナであった。

(う、ううッ!?)
が、急に足に力が入らなくなる。

上空から降り注ぐ奇妙な香りに顔を上げると、煙をたなびかせた小さな香炉を、憎っくき昆虫人間は掲げている。
「良い香りでしょう?・・・つい先日も、西方の売春宿でこの香炉を使って、店一番の売れっ娘にわたしの卵を飲ませてやりましたが・・・どうやらあなたにも効果はあったようですね?・・・うん、これほどの効果なら、山岳地方の小役人をしている友人に売り付けるのにもってこいですねぇ・・・」

股間が、胸が、熱くなる。
アンナは細身のレイピアを杖がわりに立っているのがやっとであった。
「お、おのれ化け物ッ!!」
それでもどうにかレイピアを振りかざす。

「おお怖い・・・そんなものを振り回されては、あなたと初夜の契りを交わすことも出来ません」
「ふ、ふざけるなっ……それに私は、既婚者だッ!!」
「なんと・・・それではあなたは、わたしを騙して重婚の罪を働いたのですね!?」

「黙れ化け物ッ!!」

妖しい香炉の煙に巻かれつつも叫ぶアンナであったが、頭上の敵に気をとられている隙をついて、いつのまにか取り囲まれてしまっていた。

「な?……あ、あなたたち、いったいどうしたのですッ!?」

年老いた給仕係。
若き貴族令息。
ヒゲの立派な衛兵。
似合わぬカツラを被った中年紳士。
そして、近衛騎士団の剣士たち。
さらには聖国王まで。

彼らは虚ろなまなこを情欲に濁らせて、それぞれの性器に血をみなぎらせ、あられもない姿のアンナを大勢で包囲していた。

昆虫人間の持つ香炉の煙の媚薬効果が、先程飲まされた卵の、雄を引き寄せるフェロモンの効果を発動させたのである。

夫のときと同じ、望まぬ相手との交合の予感。
もう2度と御免だった。

よってたかって彼女に挑みかかる男の群れを、彼女は必死で切り捨て、蹴り飛ばし、殴り倒す。
血と脳症と精液をあふれさせた死体の山が出来上がってゆく。それは相手が上位貴族であろうと、国王であろうと、ためらうことなく執行された。
先刻目覚めたばかりのバーサーク能力が、瞬間的なパワーを増幅させているがゆえの猛反撃であった。

しかしそれは、充分にコントロール出来ぬ力による悲劇でもあった。

隙をついて背後からしがみついてきた男を斬り倒した瞬間、我に返ったアンナもようやくその事実に気づく。

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