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アラサー冒険者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アラサー冒険者 33


「アガ、あが、ンがァああッ!!」
あまりの痛みにのけ反り過ぎて、後頭部を後ろの石垣に叩きつけるシーマであったが、そうでもしないとこの痛みに耐えきれないのだ。

ブッシャアアアア!!

激痛に感覚が麻痺したのであろう。シーマの股間からいきなり小便がほとばしる。

「ウオット キタナイメスダ」
抱えていたオスウシが尿の噴出を避けようと、あわてて飛び退がる。

ヴオッホホホ、グホホホ!!
ヴモッ、ブモッ、ヴモッ!!
針1本で縫い止められた、生きたままの虫けらの標本のようなシーマのありさまに、オスどもは喝采した。

(畜生……チクショウッ)
涙で顔をグシャグシャに汚しながら、シーマは歯を食い縛り、必死で尻の穴に力を込めた。
せめてダガーの柄を穴の筋肉で喰い締めていなければ、先端はますます奥へと食い込んでしまうからだ。
そうしながら両ひざを立て、地面には届かぬ足裏を背後の石垣にくっ付ける。
(ちっくしょうめェ……このシーマ様を舐めんじゃねーゾ!!)
まがりなりにも両足が踏ん張れる足場が出来たことになり、最初ほどには痛みを感じなくなった。
(……ウッ!?)
後ろ手に縛られた手に、ぬるりとしたものが感じられた。
少しどこかが裂けてしまったのであろう。指先のそれは、明らかな自分自身の血の触感であった。
子供を作れぬ身体にされて久しいが、月ごとのものはちゃんとある。
嗅ぎ慣れた自分の血の匂いが、シーマを冷静にした。

『頭に血がのぼったほうが敗けだ。例え相手を倒せても、精神的には敗者だ』
かつて夫であった男に出会った日、はじめてかけられた言葉を思い出す。

街角の安い売春窟で売れっ子だった彼女は、客を装ったフードの人物に「婚約の儀」をほどこされた。
その催淫効果をまぎらわすために、夜ごとに町へ出て男性を強姦していたシーマを、その男は剣も抜かずに軽くあしらったのだった。

最初の出会いは最悪だった。

しかし、自分を殺そうともしなければ自警団に引き渡しもしないその男に、シーマは惚れた。
自分で売春婦稼業から足を洗い、男の元へ押し掛けるようにして半ば無理やり一緒になったのだった。

それが、実は西方支部の盗賊ギルドの幹部を務めていた夫とのなれそめである。

しかし、元娼婦である彼女への周囲の風当たりはきつく、増していつまでも子を成さぬ彼女に対して良からぬ病気を疑う者まで現れる。おかしな女に入れ込んで、ギルドの職務をないがしろにしていると言う噂を立てるものもあとを断たなかった。
ついには夫が、自分の噂のために降格される話まで持ち上がったとき、シーマは離縁状を書き残してみずから姿を消したのである。

くやしかった。
悪いのは自分じゃないはずだった。
おかしな術を施したあの虫けら野郎が悪いんだ。
噂に惑わされた奴らが悪いんだ。
しかし。
下らない悪評を笑い飛ばしてくれていた夫の言葉を信じてやれなかった、自分自身が悪いんだ。

『子は産めなくても、お前は出会ったときからオレにとっちゃ、やんちゃなガキみたいなもんだッたからな?』

『……ガキなんて産んでみろ、手のかかる子供の世話がもっと増えるだけじゃねえか?』

そう言って、泣き止まない自分を泣きながら励ました男の元を去った自分自身が悪いんだ。

あの悔しさに比べたら、あの心の痛みに比べたら。
(こんな痛みなど、屁でもないッ)
心のなかで、自分に向かって叫ぶ。
(あの憎たらしいフードかぶり野郎を倒すまで、負けてたまるかよッ!!)

が、尻穴をふさがれていて屁すら出せない状況を思い出して、つい笑いが込み上げるシーマなのだった。

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