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アラサー冒険者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アラサー冒険者 26

(…人間めッ!!)
頭痛がひどくなっているのを感じながら、自分より頭ひとつ低い人間の中年貴族をランディはにらみつけた。
思えば仲間たちや家族を壊滅に追いやったのも、人間たちであった。
100歩譲っても相容れる気になろうはずがない。

「おお、怖い怖い」
相変わらずハンカチーフを口元に当てたまま、
「でもそんな、今にも噛みつきそうな顔もまた、たまらなく美しいのう」

子爵の好色そうな笑みを、ランディはたまらなく気持ちが悪いと思った。
その嫌悪感が、先程から彼女を襲っていた嘔吐感に拍車をかける。

ヴッグッ。
びちゃびちゃびちゃびちゃ……。

ほとんど透明に近い粘液のかたまりが、彼女の口からあふれだした。それは彼女の胃液の混じった、十数匹のオスウシどもの精液に他ならぬ。
どうやら先程からの頭痛や吐き気の原因は、大量に飲まされたこの精液による「食あたり」にあったようである。

吐けるだけ吐ききった胃の辺りが、刺すように痛む。
胃の府に残っていた食べ物か骨の欠片のようなものが奥歯に引っ掛かるのを感じたが、
「おお、汚ない汚ない」
ハンカチーフを振って吐瀉物の臭気を払う子爵の方を再びにらむランディであった。

「それにしても汚ない……うッぷ、それに臭すぎて鼻がどうにかなってしまいそうであるぞ?」
子爵はわざとらしくもらいゲロをほのめかしながら、辺りを見渡す。
「おお、これならば」
かかげていたたいまつを岩壁のくぼみに突き立てると、空いた右手で彼は薄汚れた木製のバケツをひろいあげ、
「それッ」
バシャッ!!
バケツにためられていた水をランディめがけてぶちまけたのだった。

囚われたランディ用の飲み水として、ギガがしぶしぶ用意してきたバケツであった。水自体は清浄なものではあったが、夜気に冷やされたそれはランディにとって粉雪のかたまりをぶつけられたように冷えきっていた。
冷水が一気にランディの体温を奪いながら、湯気となってたちのぼる。

「湯あみとしてはこれで充分であろう……ぬぐうものは生憎これしか持ち合わせがないが仕方あるまい」
そう言って、子爵はマスクがわりに鼻をおおっていたハンカチーフを濡れたランディに近づけてくる。
「触るなッ!!」
子爵の意図を察したランディは必死の形相で、手首につながれた鎖を鳴らして威嚇する。
「困った野良犬の姫であるのう……下賎のそなたを清めてやろうという親切な、かつ高貴なる我れに向かって牙を向くとは」
やれやれこれだから女というものは……と口のなかでモゴモゴつぶやきながら、子爵は上着のポケットから小さな壺を取り出し、足元に置いた。
「荘園からかどわかした小娘どもや人妻といい、こやつといい、わざわざこれを焚かぬと我が高尚なる遊戯を理解せぬのだから困ったものであるわ」
小さな蓋をあけ、それを逆さに床に置くと、壺から取り出した干からびた欠片のようなものを取りだす。たいまつの炎でそれをかるくあぶって、小指ほどのそれを、裏返した蓋の中央のくぼみに立てるのだった。
「そなたら下賎には見知らぬだろうから教えてやるが、これは香炉と言ってな?」
立てられた欠片の先端から、青紫色の煙が細く立ち上ぼり、むせかえるような香りが周囲を満たし始める。
「どうだ、良い香りであろう?」
子爵が方頬を吊り上げて微笑むと、尖った口ひげの先端もつられて動いた。
「普段であれば我れのごとき高貴なる者のみが、こうして焚きしめることでその香りを楽しむのだが」
白いハンカチーフが、ゆっくりとランディの顔に近づいてくる。
「そなたにも特別に楽しませてやろう……」
目の前を毒蛇のようにくねる煙が、鼻孔へ滑り込むのをランディは感じていた。
「この高貴なる我れ自ら、そなたを拭き清めてやるあいだ、この香りに酔いしれるが良い」

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