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アラサー冒険者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アラサー冒険者 25

「そうです。我が盟友ギガよ」
穏やかなバグーの言葉がそれをさえぎった。
「このかたはこの山岳部に君臨する領主さまです。ことのほか狩りがお好きだそうで、今日は獲物の検分も含めた土地の確認に来ていただきました。ちゃんとご挨拶なさい」
「ソンナコトヲイッテルンジャナイ!!」
ギガの顔が朱に染まる。
「ナゼ ワレワレノ ネグラニ オレノ コトワリモナクニンゲンヲ」

「ですからギガ、そこがあなたの思い違いなんです」
やれやれと言いたげに、バグーは失笑した。
「このほこら周辺は、古来このヘンドリュース7世子爵閣下の所領なのを、あなた方ウシどもや他のケダモノどもが幅を効かせて我が物顔で振る舞っていたにすぎません」

「そうじゃぞソコのケダモノ風情よ」
白絹のハンカチーフで口ひげをたくわえた鼻先をおおいながら、子爵も言った。
「ソナタらのせいで、本国から派遣される守備隊の眼を盗んで隣国と交易する計画がいつまでたっても軌道に乗らん!!……今までお前らに襲われて失われた商隊にいったいいくらかかったか解っておるのか!!この下郎め!!」

「ナ、ニ・・・?」
鈍いギガの頭でも、ゆるやかに事態が呑み込めつつあった。
「ダ、ダマス オレヲ ダマスツモリカ バグー!?」
ギガは怒りに任せて弓を降り下ろす。

「と〜んでもない…」
ヴヴヴヴヴヴヴ・・・

「!?」

弓で打ち据えたはずのバグーの姿は、一瞬で目の前から消失していた。

「いや、わたしは飛んでいますけどね〜?」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ・・・
馬鹿にしたような口調のかすれ声と、羽虫が翼を鳴らして飛び回るような不快な音がしたのは、ギガの背後からだった。

「だますつもりなんてとんでもない……」
巨大な2対の透明な翼を振るわせ、バグーは天井から垂れ下がる鍾乳石をかわしながら滞空していたのである。
しかもその手に持った例の羊皮紙に、指先を走らせて。

(ウッ!?)
………………
…………
……

「ナ、ニ・・・?」
鈍いギガの頭でも、ゆるやかに事態が呑み込めつつあった。
「ダ、ダマス オレヲ ダマスツモリカ バグー!?」
ギガは怒りに任せて弓を降り下ろす!!

ズバッ!!!
「ギャアアァァァッ!!!」

洞穴を揺るがす絶叫がギガ自身ののどから発せられている事に気がつくまで、数秒を要した。
噴水のような自分の血潮を浴びながら、彼は自分の左腕をおさえて転げ回る。

「あなたは最初からだまされていたんですよ?」

冷ややかにバグーはそうささやくと、足元に転がっている物を蹴り転がした。

切り口も鮮やかな、それはギガの左ひじから先の部分なのだった。

「悪いことは言いません……この程度じゃどうせ死にゃあしないんですから、このままそれを持って失せなさ」

「ウワァァァアアアアアア!!!!!!!」
バグーの台詞が終わらぬ内に、ギガはほこらの外へ向かって駆け出してしまっていた。
……悲鳴と鮮血を撒き散らしながら。

「お待たせしました閣下」
目深にかぶったフードを返り血に染めて、バグーは賓客を振り返る。
「薄汚れたままでよろしければ、是非とも剥製職人の手に触れさせる前に、御自分で御検分なさいませ・・・わたしはしばらく、席を外しますから」

足元に残された風間の弓を蹴飛ばしつつ、子爵は鼻をおさえたハンカチーフの陰から不気味な笑顔をバグーに返すのだった。

「・・・ああ、見張り役がいなくなってしまいましたが、すぐに何匹か寄越しますのでご安心を」
立ち去りかけて立ち止まったバグーは振り返り、
「では、どうぞごゆっくり」
深々と頭を下げて見せ、静かに退出していった。

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