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アラサー冒険者
官能リレー小説 - ファンタジー系

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アラサー冒険者 24


いまにみていろ。

ギガはひとりごちる。
このまま人狼族の縄張りを手に入れたら、長老の代わりに一族を治めるのは自分なんだ。
ざまあみろ。

バカにされた怒りが小さな身体からあふれだす。
(オモイシラセテヤル・・・)
薄汚れたまま気を失っているランディを見つめるギガのまなざしに、嗜虐的な感情が芽生えていた。
足元に捨て去られた、古ぼけた棒ッ切れのようなものを拾い上げ、彼はランディに歩み寄る。

ピシッ!!

次の瞬間には、降り下ろされた棒ッ切れがランディの脚を打ちすえていたのである。


「ギャンッ!?」
荒淫によって気を失っていた彼女であったが、まるで蹴り飛ばされた犬のような悲鳴をあげずにはいられなかった。

左の太ももの皮膚がななめに、ざっくりと裂けている。
ひどい頭痛と吐き気にもうろうとする意識をふるいおこして見上げたランディであった。
しかし。
目の前のオスウシが持つ棒状の物の正体に気がついて、脚の痛みを忘れて驚愕しなければならなかった。

古ぼけてはいたが、彼女自身が愛用していた「風間の弓」に相違無かったのである。

風間の弓。
太古の巨大生物の牙を削り出して造られた、弓としては小型のショートボウに属する。
獣人化していない時の彼女の非力を補って余りある弓である。
が、最大の特徴は、構造体である骨の空洞部分によってもたらされる無音効果にあった。
引かれた弦のきしみや、発射時の空気との摩擦音が空洞内で乱反射され、減殺されてしまう。
獲物に気配を悟られないための、いわばサプレッサー内蔵型の弓。
「風の狭間を射抜く弓」、風間の弓。
それがいま、こびりついたランディの血をしたたらせてオスウシの手にあった。

元来獣の鋭い牙を素材にしているため、近接戦闘時にも敵を突いたり、切り裂くくらいの対応ができた弓であるがゆえに、太ももに裂傷が生じたのである。

くふー、くふー・・・

血の色に興奮したギガの呼吸が乱れ始める。
「バカニシヤガッテ・・・バカニシヤガッテ・・・」
うわ言のようにつぶやく彼の手が、再び弓を振りかぶる。

しかし。
「おおお、これは美しい!!!」
2度目の打撃は、そんな声によって遮られたのである。

「やあやあ、見張り御苦労様ですねぇギガ?」
壁に鎖でつながれたままのランディを絶賛しながらはしゃぐ小男の後ろから、ゴキブリ野郎が頭を下げた。

「凄いぞバグー殿、これこそ我が館の剥製コレクションにふさわしい、美しい獲物だ!!」
風間の弓を握りしめたまま凍りつくウシ男ギガにも気づかぬふうで、やけに小綺麗に着飾った小男は喝采を続けている。

「オマエ、オマエハ」

弓を振りかざした姿のまま、ギガは低く声を発した。
「オマエハ コノバショニ ニ、ニンゲン ヲ」

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