半人前サキュバスの奮闘記 4
高度を上げてそのまま飛び続ける女性。
いったいどこに連れて行かれるのか、やっぱり不安な気持ちと。灰になった獣の亡骸を見てからというもの、私の中は妙に高ぶっていた。
「アンタさぁ、名前何て言うの?」
空中を物凄いスピードで駆け抜ける最中。
「……分からない、んです」
起きてからというもの、お空は緑色になってて、自分がいったい何者なのか分からないまま、辺り一面の草原を闇雲に歩き続けたその先には、肉食系の動物に襲われて右足を食いちぎられるし。
「はぁ?アンタ、自分の名前も分からないの?」
「えと……はい。記憶が、無いんです」
正直に話す。嘘をついても仕方ないから。
「マジで?」
「はい。」
女性が口を閉ざすと、暫くの間。私は女性にしがみつきながら、地上の絶景を眺めることに専念した。
「あのさぁ……」
ふと。
「呼びにくいから、なんか好きな呼び名、考えてくれない?なんでもいいからさー。」
なんとなく、気にかけてくれたと感じたけれど。
急に言われてもなあ。