PiPi's World 投稿小説

マッスル・ウィッチ
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 6
 8
の最後へ

マッスル・ウィッチ 8

魔術を扱うと言う事でマリーの姉弟子に当たる婦人、ネリース・フォン・ハイデルガルト婦人と部下である騎士数人が参加する事に決まった。ブランクこそあるが魔術の腕前はドワサンと同程度だ。
「宜しくお願いします」
彼女の屋敷にてアイルは深く頭を下げる。
「公子、頭を上げてください……」
「いえ……書庫の妖精と謳われた貴方が同行するなんて……」
それだけ今回の計画で黒幕が出てくる可能性もある。下手すると師匠まで出張ってくる可能性すらある……マリーは表情こそ出さなかったが不安げに感じていた。
「アイル様、なぜマリーは杖を使わずに敵を倒せるのか……お分かりですか?」
「?」
ネリースはニコッとすると自前の杖を手繰り寄せた。もう二十数年の付き合いになるので重みを感じる。
「それは彼女の魔法の効力が周囲にしか及ばないからです」
逆に言えばマリーの魔法は杖を使わなければ近距離ですら怪しく、長距離や広範囲魔術は発動できないのだ。マリーは魔術学校に通った時から致命的な欠落に悩まされ、これが元でいじめられた事もある。それを解決したのが師匠の家に一時期滞在した東方の国から来たと言うある寺院格闘家の男である。

マリーは彼の武術に打ち込む姿に惚れ、何時しか真似をする様になる。魔道士は体力勝負の一面もあるので師匠も黙認した節もある……至近距離で確実に高濃度魔力を対象に与えるのは治癒や肉体強化、祓いの魔術を得意とする者の傾向が高いがマリーの場合、それが攻撃に転用出来る。寺院格闘家の男もマリーの素質に惚れ技を伝授したと言う。ネリースがその事を知っているのは師匠から直に聞いているからだ。
「手と足で闘うなぞ、蛮族の類では……」
「そうでもないわ、東洋にはそのようなっ者達がいる寺院が数多にもある……マリーに格闘技を教えたのは流れ着いた僧侶と言った所ね」
「はい……アイル様、私の場合は本当に特殊な事例で」
「すごいっ……何時か確かめてみたい」
「あの、アイル様……何故急に杖を」
「この国は武将の国だ……故に魔術士はセジュークから派遣されないとやっていけない。もしこの国を潰すなら……」
その場に居た大人らはギョッとする。
「だから僕が魔術師として早期に一人前になる必要がある。僕のような立場の者が魔術師としても独り立ちしたら、セジュークといえど魔術師に関する権限ずくで僕や、その時の僕の部下の魔術師をどうこうできなくなるだろう。
これが、尚武の国に生まれながら武芸のできない僕にもできることだと思うんだ。」
「殿下…」
「アイル様…」
「僕が我が国の魔術師の元締めになる。そんな夢、大それているかな?」
「いいえ、それは夢で終わらせてはいけません」
ドワサンが涙目になって言う。
「うむ、確かにアイル様が大魔道師になればセジュークに頼る事はなくなるでしょう」
マリーは感心して言う。
「それに僕には呪いがある……」
「「「!!!」」」
三人とも驚くとアイルは衣類を脱ぎ出した。本当に華奢な体で衣類次第では女の子にも見える……ドワサンでも見えるほど禍々しい紋様がアイルの身体中にある。ネリースはハッとした。
「これって……“淫魔の疵”、そんな、昔に途絶えた筈」
「正に……この様な外道の呪をかけるとは……」
「あわわわわっ」
「ドワサン、この事は伏せなさい……今、ライオス様に知れたら」
そう、内乱の可能性すら出て来る。
「そうねぇ・・・内乱が起こっちゃうわねぇ・・・」

その時、そんな声がかかりディックは弾かれたように構えを取り、マリーは公子を庇うように立ち一点を見つめる。
彼女の視線の先・・・
長身かつ筋肉質の男が立っていた。

「何者だっ!」

低い声でディックが謎の男に問う。
彼の声は低く抑えられていたが、額には汗が滲んでいた。

「さあ?、何者なのかしらねぇ」

謎の筋肉質な男はオネエ言葉でディックをからかうように言うが、彼が歩いて間を詰めていくと、ディックはジリジリと後ろに下がる。

「ディック!」
「お下がり下さい公子っ!・・・コイツは『危険』ですっ!!」

傭兵の嗅覚がこの前のふざけた男がただ者ではないのを教えてくれていた。
とびっきりの危険な臭いだった。

一方、マリーは無造作に前に進み、ディックの肩をポンと叩くと彼の前にへと出る。
そして、魔導士の帽子を投げ捨て、ローブをかなぐり捨てる。

公子の目に飛び込んできたのは、マリーの背中だった。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す